RETRO少年の懐古録

ミステリー、ホラー、サイエンス、サスペンス、SF、怖い話……

【肉体改造】 体力テスト

これまで……

 

小中高で12回……

大学へ行った人なら、おそらくもう1回……

 

誰でも、10回以上は経験したことがあるのではないだろうか?

 

何のことかというと……そう、体力テストである。

 

私は、くせっ毛の目立たない陰キャラだった。

いつも、クラスのイケメンがいい記録を出すのを、遠くから見て、羨んでいるだけだった。

 

今更だが、本気で取り返しに行ってみる。

 

↓私の最高記録

 

握力 38㎏ 6点

長座体前屈 40㎝ 5点

上体起こし 26回 6点

シャトルラン 55回 4点  

50m走 7.2秒 7点

持久走 6.22 6点

反復横跳び 54回 7点

立ち幅跳び 220㎝ 6点

ハンドボール投げ 19m 4点

 

合計点数  50点 C

 

可もなく不可もなくといったところかもしれないが…

 

世の女の子は…A未満を男として見てくれない…

 

(´・ω・`)……

 

もう、学生時代は終えてしまったのだが……

せめて、Aランクくらいの身体能力は欲しい。

65点以上(A)を取りに行く!

 

いや、

せっかくだから、各種目で10点を取りに行く。

 

狙うは100点(A)

【岩男】ロックマン

 

f:id:RETRO777:20210309231912j:plain

ロックマン……私にとってのヒーローである。

 

一口にロックマンといっても、たくさんいるのだが、

私を引き付けたのは、まぎれもなく、ドット絵のロックマン

……いわゆる「岩男」である。

 

ロックマン1~6を始め、

ロックマン9、10…

その他様々なファンメイド作品の中で活躍している。

 

「岩男」は、世界初のロックマンであり、私が生まれる10年以上前に活躍し始めたヒーローである。

 

私が小学生の頃が、「Flash黄金時代」……

「思い出は億千万」

エアーマンが倒せない

 

私はそんなレトロヒーローに、思いを馳せた。

 

・今、あいつら、どこに居るの?何をしているの?答えはぼやけたままで

・大人になり 忘れてた記憶 よみがえる 鮮やかに 腕でL字作り

ウルトラマン ウルトラマン セブン

・振り返っても あの頃には 戻れない

・ただあの頃振り返る 無邪気に笑えた 汚れも知らないままに

・今じゃそんな事も忘れて 何かから逃げるように 毎日生きてる

 

そう言えば、ウルトラセブンも、私にとってヒーローの一人だ。

いつか、モロボシダンのような、恐怖に、そして甘えに屈しない人間になりたかった。

 

そんなヒーローの活躍を見ておきながら、どうして私は、こんな大人になってしまったんだろう……

 

現在……

 

ロックマンの姿を見るたび、自分と対比して悲しくなってしまうことを、正直うれしく思っている。

 

今からでも遅くない。

 

私も、ヒーローのようになる。

【語り】コロナは地球の未来のために人を滅ぼしに来た。

※盲目の住職さんの語りです。

 

――――――――――――――――――

 

コロナは人を滅ぼしに来た。

人間が生きるためには、海を超える必要も山を越える必要もない。

 

 

グローバル化なんぞせんかったら、コロナは蔓延しなかった。

豊かさを知らなかったら、人間は衰退しない。

人間は暴利をむさぼり、物欲に身をさらけ出すことで、その存亡を危める結果に至った。

 

あるものを大事にし、あるものを尊ぶ生き方を選択しなかったものは、真っ先にコロナに殺される。

いるかいないか分からん神仏さんを慕って金を取っている私が言えた口でないかもしれない。

しかし、コロナは人口削減、あるいは、人類滅亡のためにやってきた。

 

終わりだとは思えない。

 

 

【怖い話】狙われた男

f:id:RETRO777:20210309221935j:plain


 俺はよく、命を狙われた。
 相手は殺し屋などではない。
 そこらへんにいる生命だ。

 ――――――――――――――――――――――

 異変に気づいたのは、幼少の頃だった。
 野犬に命を狙われた。
 野犬とはいえ、小さい子犬である。
 そうそう人間を殺す力はない。
 しかし、その幼い身体には、鼻先から、尾の先端まで、並々ならぬ怨恨がこもっているのを感じた。
 何よりも、その眼光…… 
 憤怒とも殺意ともとれる……鋭利な視線……
 こいつは……間違いなく俺を殺しに来ている……
 本物を見たことはないが、殺し屋の眼光とはこのようなものだろうと感じ取った。
 
 その後、その犬は、俺を助けに来た大人によって殺された。
 俺は犬にちょっかいを出した覚えはない。
 恨まれる覚えなど、微塵もないのだ。
 
 幸いにも……咬傷は軽くで済んだ。
 
 ……
 ……
 ……

 旅行で、景勝地に行ったとき……
 突然、樹上からリスが襲い掛かってきた。
 クルミの殻さえも砕く、小さいながらも鋭利な凶器は、俺の首筋に突き刺さった。
 俺は反射的にリスをはじいた。
 奴は、石に頭をぶつけ、動かなくなった。
 首筋の傷は、もう少し深かったなら、切れてはいけないモノを切っていた……と医者は言った。
 
 ……
 ……
 ……
 

 ある夏……
 ううっ!!!
 俺は部屋の中で一人、叫んだ。
 この密室に、どうやって入り込んだのか……巨大な蜂が、俺の首筋に毒針を刺した。
 幸い、大事には至らなかったが……
 間違いない……この蜂は俺を狙ってきた。
 俺は蜂など全く刺激していないというのに……

 ……
 ……
 ……
 
 こんなのはまだ氷山の一角である……
 大体、1年に1回~2回、俺は命を狙われる……

 中でも……本当に恐怖を感じたのは……
 いや、一件残らず恐ろしいのだが……中でも本当に死に近づいた2つの経験がある。
 
 海釣りをしていた時だった……
 -ピュンッッッ!!!
 海中より、突然、細長い何かが飛び出し、俺の首は貫かれた。
 ダツと呼ばれる魚である……
 うあああああっ!!!
 俺は意識を失って、即座に病院に担ぎ込まれたが、幸いにも急所は外れており、生還した。 
 取り敢えず安堵した。
 一個引っかかる点があり、ダツは、いつかのリスにやられた傷を、ほぼ正確に撃ち抜いていたのである。
 あいつは、あのリスの生まれ変わりか!?俺を恨んで……
 しかし……それならば、何故リスは初めに俺を狙ったのだろうか?
 考えても、分からない。
 
 動物園に行った時だった。
 それだけ動物にまつわる恐ろしい体験をしていて、よくもそんなところへ行けたものだなと、いま振り返って感心するが……何故か行くことになってしまったのである……
 まさか、檻の中の動物が……とは思っていたが、一寸先は闇……
 何が起こるか分からないのが、この世の理である。
 百獣の王「ライオン」……
 気高い雰囲気を持ちながらも、柵の中で、のんびり寝転がる姿は、日なたの野良猫のようであった。
 そんなのん気なことを考えていたのもつかの間……!!!
 ライオンが急に目つきを変えた……
 あ、この目は……
 種類は違うが……俺はこのライオンの眼に……かつての子犬が呈した「殺し屋の眼光」を垣間見た。
 「ウォオオオオオッッッ!!!!!」
 空気を震わせ、鼓膜を掴んで揺さぶるような、野獣の咆哮……
 ライオンが、鳥のように飛翔し、檻を飛び越え、俺の方へ向かってきた。

 俺は、反射的に逃げた。
 動物に狙われた際には、背を向けてはいけないというのは定説だが……そんなことを考えている暇はなかった。
 数秒間の間に、俺は何度もこれまでの人生を回顧した……
 奴の凶爪が背後に振り下ろされ……俺のリュックサックが引き裂かれた……
 ああ……死ぬのか……
 刹那……!
 ―ドウゥッッッ!!!
 済んでのところで、園内を回送する小さな車が突進し、ライオンを跳ね飛ばした。
 「大丈夫か!」
 職員の男性が降りてきて、俺を起こしてくれた。
 もし彼が、機転を利かせてくれなかったら、あるいは、あと一瞬でも遅れていたら……俺の身柄はリュックサックと同じような運命をたどっていたに違いない……
 「可哀想に……」なんて綺麗ごとは言いたくないが……麻酔銃どころか、実弾すら使える状況ではなかった。
 ライオンは、帰らぬ獣となった。
 
 ―――――――――――――――――――――――

 そうそう起こることでもなかったが、明らかに俺の運命はおかしい……異常だ……
 家の屋根に蜂の巣がついていることを知っていながらも、一生を蜂に刺されずに過ごす者だっているではないか……
 目に見えぬ力など信じないが……他に頼りようがない……不本意ながら、俺は占い師を訪ねた。

 ―――――――――――――――――――――――

 都会の喧騒から少し距離を置いた、裏町の一角……
 奇妙な黒いテントがあった。
 オバサンともオジサンともつかない謎の占い師が、俺を出迎えた。
 「やあ、よくおいでくださ……」
 げっ!!!
 占い師の傍らに、蛇がいたのである。
 それも、そこらへんで蜷局を巻いている野生ものの十倍もありそうな、巨大なやつである……
 いわゆる、何とかパイソンというやつだろう……
 そいつが……暴れだした!!!
 「こらっ!よしなさい!これっ!」
 占い師に鎌首を掴まれながらも、何とかパイソンは必死に暴れている……
 ……こいつも、もしかして俺を……
 「すみませんね、少々お待ちください……」
 占い師は、パイソンを掴んだまま、奥の部屋へ入ってしまった。
 俺は、呆然と立ちすくんだ。
 何だっていうんだ……一体……
 ―ガチャン!
 ケージに、鍵を掛けるような音がした。
 「やあ、すみませんね……驚かれたでしょう」
 柔らかいながらも、占い師の顔は、とても険しかった。
 「この商売を始めて長いんですが、こんなことは初めてです……」
 占い師はため息をついた……
 「彼は、あなたから逃げるために暴れ回っていましたね……あなたの運命には、よほど恐ろしい何かが憑りついているようです……私では、手に負えないかもしれない……」
 俺は、助けて欲しいと必死に請願した。しかし……
 「救う以前の問題なのです……あなたを不幸に追い落とす邪な何者かの正体が、掴める気がしない……」
 占い師はさらに苦悶の表情を呈した。
 「私の師を紹介します。すぐにでも相談してみてください。こちらから連絡を入れておきます」
 そう言って、連絡先をくれた。
 その占い師は、代金を取らなかった。
 どうせ素人には分からない世界のことだ。精神科医のように、適当に理由をつけて、金銭をせしめればいいものを……しかし……
 こうやって信憑性をもたせて、さらにこの師のもとで、高い金をぶん取るつもりではあるまいか……
 しかし、連絡先を見て……俺は凍り付く……
 『○○寺本山』
 寺……寺だと!?
ただの寺ならまだしも、全国的に有名な、由緒ある寺だ。
 一体どういうつもりだろう……
 しかし……行かない理由は無かった。
 
 ――――――――――――――――――――――

 長い石段を登り、門をくぐると……
 
 ―バババババッッッ!!!
 大量の鳩が飛び立った。
 
 「鳩は平和の象徴……良くない兆しですね……」
 住職と思われる男が、俺を眼差しを向けて言った。
 「お待ちしておりました。○○から連絡は聞いています。よく来てくださいました。」
 ○○とは、あの占い師の名前である……
 その後……
 俺は、普通の人間は入れないような、寺の奥の部屋に通された。

 ―――――――――――――――――――――――

 そこで……
「お茶をお持ちしました」

 え?……俺の思考は止まった。
 女だ……
 それもただの女ではない……
 純白の肌……
 煌びやかな艶髪…… 
 心を燃やすような口紅……
 淡い三日月のような優しい微笑み……
 均整の取れた身体……

 どんなに優れた高名な芸術家の美人画でも……
 どれほど高い倍率で選ばれた女優であろうと……
 どれだけ多くの金を積んで作りあげた整形顔でも……

 到底足元にも及ばないような美女がそこにいた……

 限られた生涯の中で……たとえ一瞬でも、この女が自分の視界に入ってくれたことを、俺は深く感謝した……
 あろうことか、彼女は、俺と目を合わせて、微笑んでいるのである。
 俺一人が、麗しいその視線を、独り占めにしているのである。
 
 そうだ……!
 空けない夜はない……止まない雨はないという……
 幸と不幸は表裏一体……
 俺の……これまでの命を削るような不幸の数々は……この幸せの前借りだったに違いない。
 俺は感動のあまり、涙を落とした。

 「あら、どうして泣いていらっしゃるの?」
 彼女は心配そうに見つめている。
 その視線もさることながら、何と美しい声だろう……
 西洋竪琴のような……
 小鳥のさえずりのような……
 水のせせらぎのような……
 だが、どれも本物には及ばない、官能的な……しかし心地よい音響だった。

 住職は、客の応対に行ったらしい。
 狭い部屋に、絶世の美女と二人だけだった。

 「ねえ?ちょっと付き合ってくれる?」
 彼女が不意に、俺の手を握った。
 !!!!!
 一瞬で昇華してしまいそうなほどに……血が湧き、肉が躍る感覚を……切に味わった。
 
 それでいて、花の蜜のような香り……
 視覚、聴覚、触覚、嗅覚……
 流石に味覚では感じ得ないが……
 ほぼすべての感覚器官及び、第六感でさえも……彼女の虜となった。

 彼女は俺と手をつなぎ、長い廊下を歩く……いつまでもこの感覚が続いて欲しかった。

 そこは、さらに小さな部屋……
 「ここはね……この寺の中で、一番古くから残ってる部屋なのよ」
 彼女は、接吻するかの如く顔を近づけ……微笑んだ。
 美しい……

 

 

 ―グシャッ!!!
 んん……???
 鈍い音…… 
 同時に、赤黒い何かが部屋の中へ飛び散った。
 ……?????

 「覚えているかしら?忘れたとは言わせないわ……」
 先ほどとは一転、恨みの感情に満ちた眼差し……殺し屋の眼光……!!!

 「ガス室……鉄格子……銃……兵隊……」

 一瞬、彼女の姿が、大柄で、そして血まみれの外国人の男のように見えた。
 違う……血まみれなのは俺の方だ……
 部屋に飛び散っているのは、間違いなく俺の血だった。

 「数えきれないほどの人に……あなたは一体何をしたの?」

 俺は……

 「死んだって許さないわ。私たちは永遠にあなたを呪い続ける。生まれてくるあなたに、永遠に死の苦しみをあたえ続ける。いつまでも、いつまでも……」

 俺は……まさか……

 「あたしはやっと人間になれたのよ……この機会は逃さないわ……」

 ああ……
 「ホロ……コ……スト」

 俺は、死の淵から落ちる直前……思い出した。
 俺という人間になる前の……
 もっともっと、はるか昔の魂に刻まれた記憶……
 
 そうだ。
 俺は……
 ずっとずっと遠い昔……

 

 

 

 独裁者だった。

「語り」タイムリープ

f:id:RETRO777:20210226230051p:plain

タイムリープしかけた経験があります。

 

タイムリープとは、説明するまでもないでしょうが、過去の自分に現在の自分の意識を飛ばすことです。

 

○方法

・過去を思い浮かべて、眠ります。

・意識が飛んでいる状態です。

・意識が、過去の情景へ飛び……その時空の自分の記憶を上書きします。

・上書きできる記憶の容量は決まっているので、世界的な学者が2歳時に戻っても、2歳児の学者は生まれません。

・もう、くだらない現実とはサヨナラです。その時空に行きましょう。

・ちなみに現在の自分は、いなかったことになります。

 

 

 

 しかし私は、目覚まし時計に邪魔されてまだこの時空にいます。「4つ目の猫」や「白いドロガメ」のように、何か番人みたいなものがいたりいなかったり……

 寝る前に、過去の写真などを眺めるといいでしょう。

 番人と戦うための武器になります。

 

 難しいですが、根気よくやれば、過去へ行けるはずです。

 次の日に予定がある場合には薦めません。

 

 私は、暫く予定なしなので、存分に挑戦できます。

 今夜こそ、時空の壁を破ってやりましょう。

 

RETRO

 

【2chの怖い話名作選】自己責任 (感想付き)

f:id:RETRO777:20210224194546j:plain

あらかじめお断りしておきますが、この話を読まれたことでその後何が起きても保証しかねます。

*自己責任の下で読んで下さい。

*保証、責任は一切持ちません。

 

5年前、私が中学だった頃、一人の友達を亡くしました。

表向きの原因は精神病でしたが、実際はある奴等に憑依されたからです。

私にとっては忘れてしまいたい記憶の一つですが、先日古い友人と話す機会があり、あのときのことをまざまざと思い出してしまいました。

ここで、文章にすることで少し客観的になり恐怖を忘れられると思いますので、綴ります。

 

私たち、(A・B・C・D・私)は、皆家業を継ぐことになっていて、高校受験組を横目に暇を持て余していました。

学校も、私たちがサボったりするのは、受験組の邪魔にならなくていいと考えていたので、体育祭後は朝学校に出て来さえすれば後は抜け出しても滅多に怒られることはありませんでした。

 

ある日、友人A&Bが、近所の屋敷の話を聞いてきました。改築したばかりの家が、持ち主が首を吊って自殺して一家は離散、空き家になってるというのです。

サボった後のたまり場の確保に苦労していた私たちは、そこなら酒タバコが思う存分できると考え、翌日すぐに昼から学校を抜けて行きました。

 

外から様子のわからないような、とても立派なお屋敷で、こんなところに入っていいのか、少しびびりましたが、ABは「大丈夫」を連発しながらどんどん中に入って行きます。

既に調べを付けていたのか、勝手口が空いていました。書斎のような所に入り、窓から顔を出さないようにして、こそこそ酒盛りを始めました。

 

でも大声が出せないのですぐに飽きてきて、5人で家捜しを始めました。すぐCが「あれ何や」と、今いる部屋の壁の上の方に気が付きました。

壁の上部に、学校の音楽室や体育館の放送室のような感じの小さな窓が二つついているのです。

「こっちも部屋か」

よく見ると壁のこちら側にはドアがあって、ドアはこちら側からは本棚で塞がれていました。

肩車すると、左上の方の窓は手で開きました。

今思うと、その窓から若干悪臭が漂っていることにそのとき疑問を持つべきでした。

 

それでもそのときの、こっそり酒を飲みたいという願望には勝てず、無理矢理窓から部屋に入りました。

部屋はカビホコリと饐えたような臭いが漂っています。雨漏りしているのかじめっとしていました。

部屋は音楽室と言えるようなものではありませんでしたが、壁に手作りで防音材のようなものが貼ってあり、その上から壁紙が貼ってあることはわかりました。湿気で壁紙はカピカピになっていました。

部屋の中はとりたてて調度品もなく、質素なつくりでしたが、小さな机が隅に置かれており、その上に、真っ黒に塗りつぶされた写真が、大きな枠の写真入れに入ってました。

 

「なんやこれ、気持ち悪い」と言って友人Aが写真入れを手にとって、持ち上げた瞬間、額裏から一枚の紙が落ち、その中から束になった髪の毛がバサバサ出てきました。紙は御札でした。

 

みんな、ヤバと思って声も出せませんでした。

 

顔面蒼白のAを見てBが急いで出ようと言い、逃げるようにBが窓によじ登ったとき、そっちの壁紙全部がフワッとはがれました。

写真の裏から出てきたのと同じ御札が、壁一面に貼ってありました。「何やこれ」酒に弱いCはその場でウッと反吐しそうになりました。

「やばいてやばいて」「吐いてる場合か急げ」

よじのぼるBの尻を私とDでぐいぐい押し上げました。何がなんだかわけがわかりませんでした。

後ろではだれかが「いーーー、いーーー」と声を出しています。きっとAです。祟られたのです。恐ろしくて振り返ることもできませんでした。

無我夢中でよじのぼって、反対側の部屋に飛び降りました。

Dも出てきて、部屋側から鈍いCを引っ張り出そうとすると、「イタイタ」Cが叫びます「引っ張んな足!」部屋の向こうではAらしき声がわんわん変な音で呻いています。

Cはよほどすごい勢いでもがいているのか、Cの足がこっちの壁を蹴る音がずんずんしました。

 

「B!かんぬっさん連れて来い!」後ろ向きにDが叫びました。

「なんかAに憑いとる、裏行って神社のかんぬっさん連れて来いて!」Bが縁側から裸足でダッシュしていき、私たちは窓からCを引き抜きました。

 

「足!足!」

「痛いか?」

「痛うはないけどなんか噛まれた」

 

見るとCの靴下のかかとの部分は丸ごと何かに食いつかれたように、丸く歯形がついて唾液で濡れています。

相変わらず中からはAの声がしますが、怖くて私たちは窓から中を見ることができませんでした。

 

「あいつ俺に祟らんかなぁ」

「祟るてなんやAはまだ生きとるんぞ」

「出てくるときめちゃくちゃ蹴ってきた」

「しらー!」

 

縁側からトレーナー姿の神主さんが真青な顔して入ってきました。

 

「ぬしら何か! 何しよるんか! 馬鹿者が!」

 

一緒に入ってきたBはもう涙と鼻水でぐじょぐじょの顔になっていました。

「ええからお前らは帰れ、こっちから出て神社の裏から社務所入ってヨリエさんに見てもらえ、あとおい!」

といきなり私を捕まえ、後ろ手にひねり上げられました。

後ろで何かザキっと音がしました。

「よし行け」そのままドンと背中を押されて私たちは、わけのわからないまま走りました。

 

それから裏の山に上がって、神社の社務所に行くと、中年の小さいおばさんが、白い服を着て待っていました。

めちゃめちゃ怒られたような気もしますが、それから後は逃げた安堵感でよく覚えていません。

 

それから、Aが学校に来なくなりました。

私の家の親が神社から呼ばれたことも何回かありましたが、詳しい話は何もしてくれませんでした。

ただ山の裏には絶対行くなとは、言われました。

私たちも、あんな恐ろしい目に遭ったので、山など行くはずもなく、学校の中でも小さくなって過ごしていました。

 

期末試験が終わった日、生活指導の先生から呼ばれました。

今までの積み重ねまとめて大目玉かな、殴られるなこら、と覚悟して進路室に行くと、私の他にもBとDが座っています。神主さんも来ていました。生活指導の先生などいません。

私が入ってくるなり神主さんが言いました。

 

「あんなぁ、Cが死んだんよ」

 

信じられませんでした。

Cが昨日学校に来ていなかったこともそのとき知りました。

 

「学校さぼって、こっちに括っとるAの様子を見にきよったんよ。病院の見舞いじゃないとやけん危ないってわかりそうなもんやけどね。

裏の格子から座敷のぞいた瞬間にものすごい声出して、倒れよった。

駆けつけたときには白目むいて虫の息だった」

 

Cが死んだのにそんな言い方ないだろうと思ってちょっと口答えしそうになりましたが、神主さんは真剣な目で私たちの方を見ていました。

 

「ええか、Aはもうおらんと思え。Cのことも絶対今から忘れろ。アレは目が見えんけん、自分の事を知らん奴の所には憑きには来ん。アレのことを覚えとる奴がおったら、何年かかってもアレはそいつのところに来る。来たら憑かれて死ぬんぞ。

それと後ろ髪は伸ばすなよ。もしアレに会って逃げたとき、アレは最初に髪を引っ張るけんな」

 

それだけ聞かされると、私たちは重い気持ちで進路室を出ました。

あのとき神主さんは私の伸ばしていた後ろ毛をハサミで切ったのです。

何かのまじない程度に思っていましたが、まじないどころではありませんでした。帰るその足で床屋に行き、丸坊主にしてもらいました。

 

卒業して家業を継ぐという話は、その時から諦めなければいけませんでした。

その後私たちはバラバラの県で進路につき、絶対に顔を合わせないようにしよう、もし会っても他人のふりをすることにしなければなりませんでした。

私は、1年遅れて隣県の高校に入ることができ、過去を忘れて自分の生活に没頭しました。髪は短く刈りました。

しかし、床屋で「坊主」を頼むたび、私は神主さんの話を思い出していました。

今日来るか、明日来るか、と思いながら、長い3年が過ぎました。

 

その後、さらに浪人して、他県の大学に入ることができました。

しかし、少し気を許して盆に帰省したのがいけませんでした。

 

もともと私はおじいちゃん子で、祖父はその年の正月に亡くなっていました。

急のことだったのですが、せめて初盆くらいは帰ってこんか、と、電話で両親も言っていました。それがいけませんでした。

 

駅の売店で新聞を買おうと寄ったのですが、中学時代の彼女が売り子でした。

彼女は私を見るなりボロボロと泣き出して、BとDがそれぞれ死んだことをまくし立てました。

 

Bは卒業後まもなく、下宿の自室に閉じこもって首をくくったそうです。部屋は雨戸とカーテンが閉められ、部屋じゅうの扉という扉を封印し、さらに自分の髪の毛をその上から一本一本几帳面に張り付けていたということでした。

鑞で自分の耳と瞼に封をしようとした痕があったが、最後までそれをやらずに自害したという話でした。

 

Dは17の夏に四国まで逃げたそうですが、松山の近郊の町で、パンツ1枚でケタケタ笑いながら歩いているのを見つかったそうです。

Dの後頭部は烏がむしったように髪の毛が抜かれていました。

Dの瞼は、閉じるのではなく、絶対閉じないようにと自らナイフで切り取ろうとした痕があったそうです。

 

このときほど中学時代の人間関係を呪ったことはありません。BとDの末路など、今の私にはどうでもいい話でした。

つまり、アレを覚えているのは私一人しか残っていないと、気づかされてしまったのです。

 

胸が強く締め付けられるような感覚で家に帰り着くと、家には誰もいませんでした。

後で知ったことですが、私の地方は忌廻しと云って、特に強い忌み事のあった家は、本家であっても初盆を奈良の寺で行うという風習があったのです。

私は連れてこられたのでした。

 

それから3日、私は9度以上の熱が続き、実家で寝込まなければなりませんでした。

このとき、私は死を覚悟しました。

仏間に布団を敷き、なるだけ白い服を着て、水を飲みながら寝ていました。

3日目の夜明けの晩、夢にAが立ちました。Aは骨と皮の姿になり、黒ずんで、白目でした。

 

「お前一人やな」

「うん」

「お前もこっち来てくれよ」

「いやじゃ」

「Cが会いたがっとるぞ」

「いやじゃ」

「おまえ来んとCは毎日リンチじゃ。逆さ吊りで口に靴下詰めて蹴り上げられよるぞ、かわいそうやろ」

「うそつけ。地獄がそんな甘いわけないやろ」

「ははは地獄か地獄ちゅうのはなぁ」

 

そこで目を覚ましました。自分の息の音で喉がヒイヒイ音を立てていました。

枕元を見ると、祖父の位牌にヒビが入っていました。

 

私は、考えました。

アレの話を私と同じように多くの人に話せば、アレが私を探し当て、私が憑依される確率は下がるのではないか。

ここまでの長文たいへん失礼しましたが、おおざっぱな書き方では読んだ方の記憶に残らないと思ったのです。

読んだ方は、申し訳ないのですが犬に噛まれたとでも思ってください。

ご自分の生存確率を上げたければこの文章を少しでも多くの方の目に晒すことをおすすめします。

 

 

 

○感想

 ネット上にあふれる怖い話の中で「自己責任系」の元祖となる物語かと思います。

 ちなみに私はこれを始めて読んでから6年たちますが、何も起こっておりません。

 そんな怪事件があったら、新聞の一面を飾っていそうなものですが……特定班が何も掴んでいないところを見ると、やはり架空の話なんでしょうか……

 めっちゃ伸びてますが、後れ髪を引かれる思いです。

 寂しい……(´・ω・`)

【2chの怖い話名作選】八尺様 (感想付き)

f:id:RETRO777:20210220221709j:plain


親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。

農家なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってバイクに乗るようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。

じいちゃんとばあちゃんも「よく来てくれた」と喜んで迎えてくれたしね。

でも、最後に行ったのが高校三年にあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。

決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこんなことだ。

 

春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にバイクで行った。まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。そうしたら

「ぽぽ、ぽぽっぽ、ぽ、ぽっ…」

と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。

何だろうと思っていると、庭の生垣の上に帽子があるのを見つけた。

生垣の上に置いてあったわけじゃない。帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人女性が見えた。まあ、帽子はその女性が被っていたわけだ。

 

女性は白っぽいワンピースを着ていた。でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高い女なんだ…

驚いていると、女はまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。また、いつのまにか「ぽぽぽ」という音も無くなっていた。

 

そのときは、もともと背が高い女が超厚底のブーツを履いていたか、踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。

その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。

 

「さっき、大きな女を見たよ。男が女装してたのかなあ」

と言っても「へぇ~」くらいしか言わなかったけど

「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽぽぽ』とか変な声出してたし」

と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。

その後、「いつ見た」「どこで見た」「垣根よりどのくらい高かった」と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。

じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電話まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。

ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。

 

じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると

「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった」

と言った。

――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。と必死に考えたが、何も思い当たらない。あの女だって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。

そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」

と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。

 

ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると

「八尺様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」

と震えた声で言った。

それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。

 

この辺りには「八尺様」という厄介なものがいる。

八尺様は大きな女の姿をしている。名前の通り八尺ほどの背丈があり、「ぼぼぼぼ」と男のような声で変な笑い方をする。

人によって、喪服を着た若い女だったり、留袖の老婆だったり、野良着姿の年増だったりと見え方が違うが、女性で異常に背が高いことと頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。

昔、旅人に憑いて来たという噂もあるが、定かではない。

この地区(今は○市の一部であるが、昔は×村、今で言う「大字」にあたる区分)に地蔵によって封印されていて、よそへは行くことが無い。

八尺様に魅入られると、数日のうちに取り殺されてしまう。

最後に八尺様の被害が出たのは十五年ほど前。これは後から聞いたことではあるが、地蔵によって封印されているというのは、八尺様がよそへ移動できる道というのは理由は分からないが限られていて、その道の村境に地蔵を祀ったそうだ。八尺様の移動を防ぐためだが、それは東西南北の境界に全部で四ヶ所あるらしい。

もっとも、何でそんなものを留めておくことになったかというと、周辺の村と何らかの協定があったらしい。例えば水利権を優先するとか。

八尺様の被害は数年から十数年に一度くらいなので、昔の人はそこそこ有利な協定を結べれば良しと思ったのだろうか。

 

そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。

そのうち、じいちゃんが一人の老婆を連れて戻ってきた。

「えらいことになったのう。今はこれを持ってなさい」

Kさんという老婆はそう言って、お札をくれた。

それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。

ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。

ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。

 

しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。

そこは窓が全部新聞紙で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅には盛塩が置かれていた。

また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さな仏像が乗っていた。

あと、どこから持ってきたのか「おまる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことか・・・

 

「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。俺もばあさんもな、お前を呼ぶこともなければ、お前に話しかけることもない。そうだな、明日朝の七時になるまでは絶対ここから出るな。七時になったらお前から出ろ。家には連絡しておく」

 

と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。

「今言われたことは良く守りなさい。お札も肌身離さずな。何かおきたら仏様の前でお願いしなさい」

とKさんにも言われた。

テレビは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても上の空で気も紛れない。部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれたおにぎりやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。

 

そんな状態でもいつのまにか眠っていたようで、目が覚めたときには、何だか忘れたが深夜番組が映っていて、自分の時計を見たら、午前一時すぎだった。(この頃は携帯を持ってなかった)

なんか嫌な時間に起きたなあなんて思っていると、窓ガラスをコツコツと叩く音が聞こえた。小石なんかをぶつけているんじゃなくて、手で軽く叩くような音だったと思う。

風のせいでそんな音がでているのか、誰かが本当に叩いているのかは判断がつかなかったが、必死に風のせいだ、と思い込もうとした。

落ち着こうとお茶を一口飲んだが、やっぱり怖くて、テレビの音を大きくして無理やりテレビを見ていた。そんなとき、じいちゃんの声が聞こえた。

「おーい、大丈夫か。怖けりゃ無理せんでいいぞ」

思わずドアに近づいたが、じいちゃんの言葉をすぐに思い出した。

また声がする。

「どうした、こっちに来てもええぞ」

じいちゃんの声に限りなく似ているけど、あれはじいちゃんの声じゃない。

どうしてか分からんけど、そんな気がして、そしてそう思ったと同時に全身に鳥肌が立った。

ふと隅の盛り塩を見ると、それは上のほうが黒く変色していた。

 

一目散に仏像の前に座ると、お札を握り締め「助けてください」と必死にお祈りをはじめた。そのとき

「ぽぽっぽ、ぽ、ぽぽ…」

あの声が聞こえ、窓ガラスがトントン、トントンと鳴り出した。

そこまで背が高くないことは分かっていたが、アレが下から手を伸ばして窓ガラスを叩いている光景が浮かんで仕方が無かった。

もうできることは、仏像に祈ることだけだった。

 

とてつもなく長い一夜に感じたが、それでも朝は来るもので、つけっぱなしのテレビがいつの間にか朝のニュースをやっていた。画面隅に表示される時間は確か七時十三分となっていた。

ガラスを叩く音も、あの声も気づかないうちに止んでいた。どうやら眠ってしまったか気を失ってしまったかしたらしい。盛り塩はさらに黒く変色していた。

 

念のため、自分の時計を見たところはぼ同じ時刻だったので、恐る恐るドアを開けると、そこには心配そうな顔をしたばあちゃんとKさんがいた。

ばあちゃんが、よかった、よかったと涙を流してくれた。下に降りると、親父も来ていた。

じいちゃんが外から顔を出して「早く車に乗れ」と促し、庭に出てみると、どこから持ってきたのかワンボックスのバンが一台あった。そして、庭に何人かの男たちがいた。

ワンボックスは九人乗りで、中列の真ん中に座らされ、助手席にKさんが座り、庭にいた男たちもすべて乗り込んだ。全部で九人が乗り込んでおり、八方すべてを囲まれた形になった。

 

「大変なことになったな。気になるかもしれないが、これからは目を閉じて下を向いていろ。俺たちには何も見えんが、お前には見えてしまうだろうからな。いいと言うまで我慢して目を開けるなよ」

 

右隣に座った五十歳くらいのオジさんがそう言った。

そして、じいちゃんの運転する軽トラが先頭、次が自分が乗っているバン、後に親父が運転する乗用車という車列で走り出した。

車列はかなりゆっくりとしたスピードで進んだ。おそらく二十キロも出ていなかったんじゃあるまいか。

間もなくKさんが、「ここがふんばりどころだ」と呟くと、何やら念仏のようなものを唱え始めた。

 

「ぽっぽぽ、ぽ、ぽっ、ぽぽぽ…」

 

またあの声が聞こえてきた。

Kさんからもらったお札を握り締め、言われたとおりに目を閉じ、下を向いていたが、なぜか薄目をあけて外を少しだけ見てしまった。

目に入ったのは白っぽいワンピース。それが車に合わせ移動していた。あの大股で付いてきているのか。

頭はウインドウの外にあって見えない。しかし、車内を覗き込もうとしたのか、頭を下げる仕草を始めた。

無意識に「ヒッ」と声を出す。

「見るな」と隣が声を荒げる。

慌てて目をぎゅっとつぶり、さらに強くお札を握り締めた。

 

コツ、コツ、コツ

 

ガラスを叩く音が始まる。周りに乗っている人も短く「エッ」とか「ンン」とか声を出す。

アレは見えなくても、声は聞こえなくても、音は聞こえてしまうようだ。Kさんの念仏に力が入る。

やがて、声と音が途切れたと思ったとき、Kさんが「うまく抜けた」と声をあげた。それまで黙っていた周りを囲む男たちも「よかったなあ」と安堵の声を出した。

やがて車は道の広い所で止り、親父の車に移された。

親父とじいちゃんが他の男たちに頭を下げているとき、Kさんが「お札を見せてみろ」と近寄ってきた。

無意識にまだ握り締めていたお札を見ると、全体が黒っぽくなっていた。

Kさんは

「もう大丈夫だと思うがな、念のためしばらくの間はこれを持っていなさい」

と新しいお札をくれた。

その後は親父と二人で自宅へ戻った。

 

バイクは後日じいちゃんと近所の人が届けてくれた。親父も八尺様のことは知っていたようで、子供の頃、友達のひとりが魅入られて命を落としたということを話してくれた。

魅入られたため、他の土地に移った人も知っているという。

バンに乗った男たちは、すべてじいちゃんの一族に関係がある人で、つまりは極々薄いながらも自分と血縁関係にある人たちだそうだ。

前を走ったじいちゃん、後ろを走った親父も当然血のつながりはあるわけで、少しでも八尺様の目をごまかそうと、あのようなことをしたという。

親父の兄弟(伯父)は一晩でこちらに来られなかったため、血縁は薄くてもすぐに集まる人に来てもらったようだ。

それでも流石に七人もの男が今の今、というわけにはいかなく、また夜より昼のほうが安全と思われたため、一晩部屋に閉じ込められたのである。

道中、最悪ならじいちゃんか親父が身代わりになる覚悟だったとか。

そして、先に書いたようなことを説明され、もうあそこには行かないようにと念を押された。

家に戻ってから、じいちゃんと電話で話したとき、あの夜に声をかけたかと聞いたが、そんなことはしていないと断言された。

――やっぱりあれは…

と思ったら、改めて背筋が寒くなった。

 

八尺様の被害には成人前の若い人間、それも子供が遭うことが多いということだ。

まだ子供や若年の人間が極度の不安な状態にあるとき、身内の声であのようなことを言われれば、つい心を許してしまうのだろう。

 

それから十年経って、あのことも忘れがちになったとき、洒落にならない後日談ができてしまった。

「八尺様を封じている地蔵様が誰かに壊されてしまった。それもお前の家に通じる道のものがな」

と、ばあちゃんから電話があった。

(じいちゃんは二年前に亡くなっていて、当然ながら葬式にも行かせてもらえなかった。じいちゃんも起き上がれなくなってからは絶対来させるなと言っていたという)

今となっては迷信だろうと自分に言い聞かせつつも、かなり心配な自分がいる。

「ぽぽぽ…」という、あの声が聞こえてきたらと思うと…

 

 

 

○感想

 主人公……無事だったんでしょうか?

 一体、八尺様に魅入られたら、どんな死に方をするんでしょうかね。 

 流石に、八尺様に襲われ、死亡……という記事の飾り方はしないでしょうから、心臓発作とかなんですかね。

 いずれにしても、リアリティーに満ち溢れていて、恐ろしい短編でした。

 この怪談を初めて読んだ日、驚愕する「祖父ちゃん」「祖母ちゃん」を想像して、背筋が凍ったのを覚えています。

 さすが、ネット上の怖い話の代表格ですね!

 

【2chの怖い話名作選】昔田舎で起こった恐ろしい話 (感想付き)

f:id:RETRO777:20210220220412j:plain

これを誰かに話すのははじめてなんだが、暇な奴は聞いてくれ。

 

あらかじめ断っておくけど、相当に長い上にヘタクソな文だと思う。

エ※もない。

そして多分レスもしない。すまない、あまり時間が無いんだ。

ネタや釣りだと思われてもかまわない。

俺が吐き出したいだけというスレだ。

ただ出来るだけ多くの人の目に触れてほしい。

 

早速話をはじめよう。

俺が小学5年の頃の話だ。

 

東京で生まれ育った一人っ子の俺は、ほぼ毎年夏休みを利用して1ヶ月程母方の祖父母家へ行っていた。

両親共働きの鍵っ子だったので、祖父母家に行くのはたいてい俺一人だったが、初孫だった俺を祖父母はいつも笑顔で歓迎してくれた。

山あいにある小さな集落で、集落の北端は切り立った山になってて、その山のすぐ下を県道が走ってる。

県道沿いに商店が数軒並んでて、その中に祖父母家があった。

山を背にすると猫の額程の平地があり、真ん中に川が流れてて、川を渡って数分歩くとすぐ山になる。

山に挟まれた県道と川がしばらく坂を上っていくと、険しい峠になっていて、この集落は峠までの道で最後の集落になってる。

この峠は名前も何だか不気味だったこともあって、昔ながらの怪談話をよく大人たちに聞かされたものだった。

そんな寒村の小さな集落、全部合わせて50人も住んでないような場所だから、遊び仲間になる子供も5~6人ぐらいしか居なかった。

 

よく遊んでいたのが

子供たちの年長者であるA(中1)

Aの弟のB(小6)

仲間内で唯一俺より年下だった魚屋のC(小4)

 

川で泳いだりカブトムシを取りに行ったり、東京のコンクリートジャングルで生まれ育った俺にとって、ファミコンが無くても楽しい田舎での暮らしは新鮮で天国のようだった。

 

小5の夏休み。

俺は例年通り新幹線とローカル線、さらにバスを乗り継ぎ6~7時間掛けて祖父母家に行った。

翌日から遊び仲間たちに挨拶回りをして、早速あちこち走り回って遊びまくった。

集落の大人たちから「行ってはいけない」と言われていた

集落南端の山中にあるお稲荷さんで肝試しもした。

カンカン照りの昼間だけど、鬱蒼とした森の中で、北向きなせいもあって薄暗くて怖かったな。

 

それとは別にもう1ヶ所「行ってはいけない」と言われてた場所がある。

場所、と言うか、俺が聞いてたのは漠然としたエリアで、

県道伝いに峠方面に行くと、県道沿いに製材工場と墓地がある。

その墓地から先には絶対に行くな、と。

今でこそ県道は道幅が拡張されたり、トンネルがいくつもできたりしてるらしいが、

当時は集落から数キロ先の峠まで、道幅も狭くて交通量も多かったので危ないからだと説明されていた。

確かに両親と車で行ったとき、車で峠を越えたことがあったけど、崖にへばりつくような道で、

車線内に収まりきらない大型トラックがセンターラインを跨ぎながらビュンビュン走ってたのを覚えている。

 

肝試しの翌日、昨日の肝試しはたいしたこと無かったなと、皆で強がりながら話しているとき、Bがニヤニヤしながら話はじめた。

 

B「峠の方に行った墓の先、鎖がしてある道あるじゃん?あの先にすっげぇ不気味な家があるらしいよ!」

A「家?鎖の奥に行ったことあるけどそんなの無かったぞ」

C「えぇ?A君行ったことあるの!?あの鎖の先は絶対行っちゃいけないって…」

A「おう、内緒だぞw」

 

どうやら本当に行ってはいけない場所というのは、鎖のある道小道だったようだ。

 

A「あの道の先って、川にぶつかって行き止まりだぞ。」

B「それがな、昔はあの先に橋があったらしいんだよ。でも俺たちが生まれた頃に洪水で流されたんだって。

で、あの道とは別に、川の手前から斜めに入ってく旧道があるらしいんだよ。そこに古い橋がまだ残ってるって話だぜ。

旧道は藪だらけだし、周りは林だからあの道から橋も見えないけどな。」

A「誰に聞いたんだ…?」

B「□□(別地域)の奴に。いわくつきの家らしいよ。」

A「面白そうだな。」

B「だろ?今から行ってみようぜ!」

 

AB兄弟はノリノリだったが、年少者で臆病なCは尻込みしていた。

 

B「Cはビビリだなwお前夜小便行けなくて寝小便が直らないらしいなw」

C「そんなことないよ!」

B「やーいビビリwおい、Cはビビリだから置いてこうぜw」

C「俺も行くよ!」

 

俺たち4人はわいわい騒ぎながら県道を峠方向に歩いていった。

 

集落から歩いて10分。

製材所や牛舎を抜けると、山側に大きな墓地がある。

そこからさらに5分程歩くと、Bが言う「鎖の道」が右手にあった。

車に乗ってたらまず気付かないであろう、幅2m程藪が薄くなっているところを覗くと、5m先に小さな鉄柱が2本あり、ダランとした鎖が道を塞いでいる。

鎖を跨ぎ、轍が消えかけ苔と雑草だらけの砂利道を少し歩くと、道は徐々に右へとカーブしていく。

鬱蒼とした木々に囲まれて薄暗いカーブを曲がっていくと、緑のトンネルの先からひときわ明るい光がさしこんでいた。

そこで川にぶつかり、道は途切れた。

今居る道の対岸にも、森の中にポツンと緑のトンネルのような道が見える。

対岸まではせいぜい10~15mぐらい。川幅ギリギリまで木々が生えてるため左右の見通しは利かない。

足元には橋台の跡と思われるコンクリートの塊があった。

 

A「やっぱ行き止まりじゃねーか」

B「まぁ待ってよ。ほら、コレ橋の跡でしょ?あっち(対岸)にも道があるし。」

A「ほんとだ」

B「戻ろうぜ。旧道の目印も聞いてあるからさ。」

 

そこから引き返してカーブを曲がっていくと、カーブの付け根あたりでBが道の脇を指差した。

 

B「ほらこの石。これが旧道の分岐だ」

 

人の頭ぐらいの大きさの、平べったい石が2つ並んで落ちていた。

ひとつは中心がすこし窪んでいて、B曰く昔はここに地蔵があったんだとか。

県道方面から見てカーブの入り口を左側、濃い藪が広がってるなかで

確かに藪が薄い一本のラインが見える。

藪の中は緩い土がヌタヌタと不快な感触だが、このライン上は心なしか踏み固められているように思えた。

藪を掻き分け、笹で手を切りながら進んでいくと、川に出た。

 

B「ほれ、橋だw」

 

Bがニヤケながら指差したのは、古びた吊り橋だった。

 

A「橋ってこれかよw行けるか?これw」

B「ホラ、結構丈夫だし行けるだろw」

 

まずはBが先陣を切って吊り橋を渡りはじめた。

ギギギギと嫌な音はするけど、見た目よりは丈夫そうだ。Cは泣きそうな顔をしていた。

いっぺんに吊り橋を渡って橋が落ちたら洒落にならないので、一人ずつ順番に対岸まで渡ることになった。

一番ノリノリのBが渡り終えると、次にA、そして俺が渡り終えて最後に残ったCを呼ぶが、モジモジしてなかなか渡ろうとしない。

 

B「おいC!何怖がってんだよ!大丈夫だよ俺らが渡れたんだから一番チビなお前が渡っても橋が落ちることはねーよ!w」

 

対岸からあーだこーだとけしかけて、5分近く掛かってようやくCも渡ってきた。

涙で顔をグショグショにしたCの頭を、笑いながらBがグシャグシャと撫でていた。

 

橋までの道と同じような藪が少し薄いだけという、獣道にも劣る旧道を2~3分程歩くと、右手から苔と雑草だらけの砂利道が合流してきた。

流された橋の先にあった車道だろう。

そこから100m程だろうか、クネクネとS字カーブを曲がっていくと、広場のような場所に出て2軒の家があった。

元々は他にも数軒家があった形跡があり、奥にはすぐ山肌が迫っていた。

家があったと思われる場所は空き地になってる為、鬱蒼とした森の中でかなり広いスカスカな空間が不気味だった。

2軒の家は平屋建てで、道を挟んで向かい合うように建っている。

どちらも明らかに廃屋で、左手の家には小さな物置があった。

 

広場の入り口には風化して顔の凹凸がなくなりつつある古い地蔵があったが、何故か赤茶けていた。

AB兄弟はすげーすげーと興奮してたが、俺とCは怖くなってしまい、黙り込んでいた。

Cはキョロキョロしながら怯えている。

どちらの家も玄関の引き戸や窓は木の板を×印の形に打ち付けて封鎖されていた。

 

B「どっかから入れないかな」

AB兄弟は家の周りをグルグル眺め回していた。

とても帰ろうなんて言える雰囲気ではないが、Cは小声で「もう帰りたい…」と呟いていた。

物置がある家の裏手からBがオーイ!と声をあげた。

 

皆でBの声のする方に言ってみると、裏手のドアは鍵が閉めてあるだけで、木の板は打ち付けられていなかった。

 

B「兄貴、一緒にコイツを引っ張ってくれよ」

Aはニヤリと笑ってBと二人でドアノブを引っ張りはじめた。

C「ダメだよ、壊れちゃうよ!」

B「誰も住んでないんだから、いいだろw」

 

せーの!と掛け声をかけながらAB兄弟は力いっぱいドアノブを引っ張った。

何度目かのせーの!でバコン!カシャン!という音と共にドアが勢い良く開いた。AB兄弟は勢い余って二人とも地面にぶっ飛んだ。

Aの左肘に出来た擦り傷が痛々しい。

 

ドアの向こうはかなり暗かったので、懐中電灯を持ってこなかったことを後悔した。

まずBが、次にAが勝手口から土足のまま入っていく。

 

B「くせー、なんだこりゃーw」

A「カビくせーなーw」

 

すっかり怯えきってるCと顔を見合わせたけど、俺は恐怖より好奇心が勝っていたので、AB兄弟のあとに続いて家に入った。

それを見たCが鼻声で「待ってよ!」と言いながらドタドタと家に入る。

 

勝手口を入るとそこは台所になっていた。

土間を改築したのか、台所部分は土の床が広がっている。

とにかくかび臭く、歩くたびに土っぽい誇りがぶわっと舞うようだった。

台所には何も無く、奥に入ると畳の部屋があった。

台所と畳部屋の境目あたりの畳は特に損傷が酷く、黒っぽく変色しグチャグチャに腐っていた。

その上にある鴨居は何かでガリガリ削ったような跡がついていた。

部屋には壁に立てかけられた大きな鏡があり、鏡と反対の壁には昭和40年代のカレンダーがぶら下がっていて、当時ですら20年近くも誰も住んでいなかったようだ。

カレンダーの下には幅1m、高さ50cm、奥行き50cmぐらいの木製の重厚な葛篭のようなものがあり、蓋の部分には黄色く変色した和紙の封筒のようなものが貼り付けてあった。

 

C「もう帰ろうよ、怖いよ…」

B「弱虫だなぁCはw」

A「折角ここまで来たんだから、なっ!」

 

ABは笑いながら葛篭を開けようとしていたが、しっかりと閉じられていてビクともしないようだった。

数分葛篭と格闘したABだったが一向に開く気配が無いので一旦諦め、室内の散策を続行することにした。

葛篭の部屋からは細くて暗い廊下が伸びており、汲み取り式の和式便所と狭苦しい風呂が並んでいて、特に風呂はグレーがかった黒い液体が固まったようなものがあって汚かった。

そして便所と風呂から廊下を挟んで反対側に、もう一部屋和室があった。

和室には全身を写せる鏡と、その鏡の反対側の壁に小さな木箱が置かれていて、木箱にはさっきの葛篭と同じく和紙の封筒のようなものが貼り付けてあった。

 

A「うわ、まただよ。なんなんだ?これ」

B「中身、見てみようぜ」

 

Bはまず木箱が開くのか試してみたが、開かなかった。

そしてビリッと和紙の封筒を剥がして、中に入っている紙を取り出した。

 

B「なんて書いてあるんだ?これ」

A「達筆過ぎて読めないな…」

 

そこにはミミズが這ったような文字が黒々と一行だけ書いてあり、左下には何かをこすったような赤黒いシミが付いていた。

 

B「あっちの紙も同じようなもんなのかな?」

 

AとBがドタドタと先ほどの葛篭の場所へ移動する後ろを、俺とCもついて行った。

 

A「ちょっと違うけど、似たようなもんだな。」

 

葛篭の文字も書いてある文字こそ違いそうだが、一行だけ書かれた文字の左下に赤黒いシミが付いている。

首をかしげながらさらに家を調べる為廊下を歩き、小箱の部屋を通り過ぎるとすぐ玄関に辿り着いた。

 

C「わっ!」

B「なんだよ?」

C「あそこに!人が!」

 

Cは顔を伏せて震えていた。

見てみると、鏡越しに人のような姿が見える。

恐る恐る玄関に行ってみると、玄関横の壁にも全身を映せる大きな鏡があり、その正面にガラスの箱に入った日本人形が飾られていた。

廊下からは壁の裏なので人形は死角になっていたのだ。

 

B「鏡に映った人形じゃねーかw」

C「…。」

B「ほんと、Cは怖がりだなwww」

 

Cはベソをかきながら真っ赤になっていたが、この状況だ。

突然鏡に人形が映ってるのを見たら怖がりのCじゃなくてもビビるだろう。

俺も少し肝を冷やした。

 

そして、この日本人形が入ったガラスの箱にも、和紙の封筒がありその中に一行の文字と赤黒いシミがあった。

 

それにしても、家財道具など一切無いのに、箱や葛篭、日本人形があり、そして鏡が置いてある。

ただでさえ薄気味悪い場所なのに、その状況は輪をかけて不気味だった。

 

B「何もねーなー、もう一軒の方行ってみるか!」

A「そーだなー。」

 

裏口に向かって廊下を歩いていく時、何気なしに玄関を振り返ってみた。

さっき鏡越しに人形が見えた場所だったが、おかしい。

そうだ、おかしい、見えるわけが無い。

この位置から人形は壁の死角になってて、俺たちは斜め前から鏡を見てる。

鏡は人形に向かって正面に向いてるわけだから、鏡に人形は映らない。

今も、人形ではなく何も無い靴棚が見えてるだけだ。

俺は鏡から目が離せなくなっていた。

その時、前を歩いていたCが声を上げた。

 

C「開いてる!」

 

和室にあった小箱の蓋が開いて、蓋は箱に立てかけられていた。

 

A「え?何で?」

B「ちょ、誰だよ開けたのw」

 

AB兄弟はヘラヘラしていたが、額には脂汗がにじんでいた。

 

A「おいB、隣の葛篭見て来い」

C「何で、Bが悪戯したの?何で開いてるの!」

B「あ、開いてる!こっちも!開いてるよ!」

A「なんだよそれ!何で開いてんだよ!?」

 

今でも何でこんなことしたのか分からないが、AB兄弟が叫んだのを聞いて急いで玄関に向かった。

 

ガラスの箱に人形は無かった。

人形は…玄関に立っていた。

 

俺は叫び声を上げたつもりだったが、声がかすれてゼーゼー音がするだけだった。

口の中がカラカラで、ぎこちなくみんながいる方に歩いて行くと、AとBがもみあってる声が聞こえた。

 

A「B!やめとけ!やばいって!」

B「畜生!こんなのたいしたことねえよ!離せよ兄貴!」

A「おいやめとけ!早くココ出るぞ!おい手伝え!」

 

AはBを羽交い絞めにして俺に手を貸せと声を上げた。

その時、AB兄弟の後ろに立てかけてあった鏡が突然倒れた。

AB兄弟にぶつかりはしなかったが、他の部屋の鏡も倒れたようで、あちこちからガシャンと大きな音がした。

鏡の裏には…黒々とした墨汁で書かれた小さな文字がびっしりと書かれていた。

鏡が倒れたことに驚いたAがBの拘束を緩めてしまったのだろう。

 

Bは

「ウオォォォォォ」

と叫び声を上げ激しく暴れ、Aを吹っ飛ばして葛篭にしがみ付いた。

 

B「ウオオオオォォォォォォォォォ!」

A「おい!B!おい!おっ…うぎゃああああああああ!!!!」

 

Bの肩越しに葛篭を見たAが突然叫び声をあげ、ペタンと尻を突いたまま、手と足をバタバタ動かしながら後ずさりした。

 

B「fそいあlzpwくぇrc」

 

もはやBが叫んでいる言葉が分からなかった。

一部聞き取れたのは、繰り返しBの口から発せられた「○○(人名)」だけだった。

 

腰を抜かしてたAが叫びながら勝手口から逃げ出した。

パニック状態だった俺とCも、Aの後を追った。

廃屋の中からは相変わらずBの何語かも分からない怒号が聞こえていた。

Aは叫びながらもう1軒の廃屋の戸をバンバンバンバン叩いていた。

俺とCはAにBを助けて逃げようと必死で声を掛け続けたが、Aは涙と涎を垂らしながら、バンバン戸を叩き続けた。

 

B「おい4くぉ30fbklq:zぢ」

 

Bは相変わらず葛篭の部屋で叫んでいる。

×印に打ち込まれた木の板の隙間から、Bが葛篭から何かを取り出しては暴れている姿がチラチラと見える。

そして、Bの居る廃屋の玄関には、明らかにBでは無い人影が、Bの居る部屋の方に向かってゆっくりゆっくり移動してるのが見えた。

 

バンバンバンバンバンバン

カタカタカタカタガタガタガタガタガシャンガシャンガシャンガシャンガシャン

 

Aが戸を叩いてるもう1軒の廃屋は、Aがバンバン叩いているのとは別の振動と音がしはじめていた。

そしてAも、B同様「○○!」とある人名を叫んでいた。

Bのいる部屋を見ると、Bのそばに誰かが居た。

顔が無い。いや、顔ははっきりと見た。

でも、印象にまるで残らない、のっぺらぼうのようだった。

ただ、目が合っている、俺のことを見ていることだけはわかった。

目なんてあったのか無かったのかすらもよくわからない顔。俺はそいつを見ながら失禁していた。

 

限界だった。

俺はCの手を引き頭にもやが掛かったような状態で廃屋を背に走り、次に記憶に残ってるのは空を見ながら製材所あたりの県道を集落に向けてフラフラ歩いているところだ。

泣きじゃくるCの手を引き、フラフラと。集落を出たのは昼前だった。

あの廃屋への往復や廃屋内の散策を含めても、せいぜい1時間半程度だったろうと思ったが、太陽は沈み山々を夜の帳が包もうとしている頃だった。

集落に着いた頃には空は濃い藍色になっていて、こんな時間まで戻らない子供を心配していた集落の大人たちに怒られた。

失禁したズボンやパンツは、すっかり乾いていたように記憶している。

 

周りの大人たちは当然仲の良かったAB兄弟が帰ってきてない事にすぐに気付き、俺たちを問い詰めた。

俺もCも呆然自失となってたのでうまく説明できなかった。

 

4人で探検をしたこと。

墓の向こうの鎖の道へ行ったこと。

そこに廃屋があったこと。

廃屋で妙な現象が起こったこと。

AとBがおかしくなったこと。

俺とCだけで逃げ帰ってきたこと。

 

俺がとぎれとぎれに話をすると、大人たちは静かになった。

青い顔をして押し黙る大人たちの中で一人だけ、真っ赤な顔で俺たちをにらむ人がいた。

AB兄弟の母親だった。

 

AB母は叫びながら俺を何発か平手打ちした。

そしてCに飛び掛ろうとしたところを、我に返った大人たちに抑えられた。

AB母は口から泡を吹きながら俺とCを罵倒し、叫んでいた。

AB父はひざから崩れ落ち、小声で「何てことを…」と呟いた。

 

その時、□□(別地域)集落にある神社の神主がカブに乗って現れた。

神主は事情を聞いていたわけではなかったようだが、俺とCを見て厳しい顔で言った。

 

神主「嫌なモノを感じて来てみたが…お前さんたち、何をした?」

 

激しく責められ咎められているような厳しい視線に突き刺されるような痛さを感じたが、同時に何か「助かった」というような安堵感もあった。

それでもまだ、頭の中がモヤモヤしていて、どこか現実感が無かった。

 

もうまともに喋れなかった俺たちに代わり、大人たちが神主に説明すると、神主はすぐに大人に何かを指示し、俺とCを連れて裏山のお稲荷さんまで走った。

俺とCは背中に指で「ハッ!ハッ!」と文字を書かれ、頭から塩と酒、そして酢を掛けられた。

 

神主「飲め!」

 

と言われ、まず酒を、そして酢を飲まされた。

そして神主が「ぬおおお!」と叫びながら俺とCの背中を力いっぱい叩くと、俺もCも嘔吐した。

嘔吐しながら神主が持っている蝋燭を見ると、蝋燭の火が渦を巻いていた。

胃の中身が何も無くなるぐらい、延々と吐き続け、服も吐瀉物にまみれた。

もう吐くものがなくなると、頭の中のモヤモヤも晴れた。

 

集落に戻り水銀灯の光を浴びると、俺とCの服についた吐瀉物の異様さに気が付いた。

黒かった。真っ黒ではなかったが、ねずみ色掛かった黒だった。

それを見てまたえずいたが、もう胃の中に吐くものが残っていないようで、ゲーゲー言うだけで何も出てこなかった。

 

その足で、□□集落の神社へ、俺とCは連れて行かれた。

服も下着も剥ぎ取られ、境内の井戸の水を頭から掛けられ、着物を着させられた。

そして着物の上からまた塩と酒、酢をまぶされてから本殿に通された。

 

神主「今お前らのとこと□□集落の青年団がAとBを探しに行っている。AとBのことは…忘れるんだ。

知らなかった事とは言え、お前たちは大変なことをしてしまった。

あそこで何を見た?封印してあったものは、見てしまったか?

俺も実際には見ていない。先代の頃の災いだ。だが何があるかは知っている。何が起こったのかも知っている。

大きな葛篭があったろう。あれは禍々しいものだ。

鏡が3枚あったろう。それは全て、隣家の反対を向いていたはずだ。

札が貼ってあったあれな、強すぎて祓えないんだ。

だからな、札で押さえ込んで、鏡で力を反射させて、効力が弱まるまでああしていたんだ。

あの鏡の先にはな、井戸があってな。そこで溢れ出た禍々しい力を浄化していたんだ。

うちの神社が代々面倒見るってことで、年に一度は様子を見に行ってたんだがな。前回行ったのは春先だったが、まだ強すぎて、運び出すことも出来ない状態だ。

俺は明日、あの家自体を封印してくる。だが完全に封印は出来ないだろう

あれはな、平たく言うと呪術のようなもんだ。

人を呪い殺す為のものだ。それが災いをもたらした。

誰に教わったのだか定かではないが、恐ろしいほどに強い呪術でな。お前らが忍び込んだ向かいの家はな、○○と言うんだが、家族が相次いで怪死して全滅した。

他にも数軒家があったが、死人こそ出てないが事故に遭うものや体調を崩す者が多くなってな。

 

お前らが忍び込んだ家には昔△△という人間が住んで居た。

△△は若い頃は快活で人の良い青年だったようだが、ある時向いに住む○○と諍いを起こしてな。それからおかしくなっちまったんだ。

他の家とも度々トラブルを起こしていたんだが、特に○○家を心底憎んでたようだ。周囲の家は、ポツリポツリと引っ越していった。

原因不明の事故や病人がドンドン出て、それが△△のせいじゃないかと噂がたってな。

結局、○○と△△の家だけが残った。昭和47年の話だ。

 

その頃から○○家の者は毎月のように厄災に見舞われ、一年後には5人家族全員が亡くなった。

△△が呪い殺したんだと近所では噂した。ますます△△に関わる者はいなくなった。

そして翌年、今度は△△の家族が一晩で全滅した。あの家は△△と奥さんの二人暮しだった。

△△は家で首を括り、奥さんは理由はわからんが風呂釜を炊き続けて、熱湯でな…。

それだけじゃない。東京に働きに出ていた息子と娘も、同じ日に事故と自殺で亡くなってる。

△△家族が死んで、捜査に来た警察関係者の中にも、自殺や事故で命を落としたり、病に倒れた人間が居るらしいが、このあたりはどこまで本当かわからんがな。

△△が使った呪術は、使った人間の手に負えるものじゃないんだよ。

当時先代の神主、俺の父親だが、とても祓うことは出来ないと嘆いてた。

△△一家が全滅して、あの集落は無人になった。

 

あの二軒はな、禍々しい気が強すぎて、取り壊しもできない程だった。

そして先代の神主は、まず災いの元になったものを封印し霊力を弱め、十分弱めることができてから祓うことにした。

祓えるのはまだまだ何十年も先だろう

そして、溢れ出た呪術の力は、お前たちに災いをもたらすだろう。

おおかたさっき吐き出させたが、これでは済まん。あの家の呪術の力と、Bのこともあるからな。

呪術の強さはともかく、お前たちを見逃しはせんだろうな、Bのこともあるから…。

塩と酒と酢、これは如何なるときも肌身離さず持っていろ。それとこれだ。

この瓶の水が煮えるように熱くなったら、お前の周りに災いが降りかかる時だ。

その時は塩を体にふりかけ、酒を少し飲み、酢で口をゆすげ。

向こう20年、いや30年か。それぐらいは続くと思っていい。今夜はゆっくり休め。

 

C、もう近寄る気はないだろうが、あそこには二度と行くな。あとでお前の両親にも言って聞かせる。出来ることなら引っ越せとな。

AとBの名も口にするな。声に出すな。

お前は東京モンだ、もうこの集落には来るな。

お前ら二人は今後会ってはならん。特に二人きりで会うなどもってのほかだ。

この話は禁忌だ。集落の者や関係者は誰しもがこの話を避ける。

お前らも今日以降、この話はするな。」

 

その日は神社に泊まり、翌日、俺は東京に帰った。

 

Bはあの場所で死んでいたそうだ。Aは外で狂っていたらしい。

そして、Bの遺体を廃屋から連れて帰った青年団の中で、1人が翌日事故で死亡。2人が精神を病んで病院送りになったそうだ。

 

Bの死因はハッキリしていないが、外傷も無く病死ということでカタがついたそうだ。

あの家を警察に捜索されるわけにはいかない。神主や町の有力者たちを巻き込み、事件にしなかったのだろう。

 

そしてAB母はあの事件以来精神を病んでしまい半年後に自殺。AB父はAB母の自殺後すぐに心筋梗塞か何か、よくある心臓疾患で急死したそうだ。

 

あの年の秋、これは元々決まっていたことだが、祖父母家は隣町に引っ越した。隣町とは言っても、40~50kmは離れている。

これであの集落との縁も切れた。

C一家も翌年には県内の別地域へと引っ越して行ったそうだ。

 

そしてこれは一昨日の話だ。

夜7時過ぎ、新宿で乗り換えの為ホームを歩いてる時、向かいのホームから視線を感じ、見てみると一人の小柄なサラリーマンがこっちを見ていた。

18年振りだというのにひと目でわかった。

Cだ。

 

Cも俺に気付いていたようで、目が合うと怯んだような顔をして、スタスタと逃げるように歩き始めた。

人ごみをかきわけ俺は走った。

 

俺「C!」

 

Cの腕を掴むと、怯えたような顔で俺を見た。

 

C「あぁ、やっぱり…。」

 

観念したCと二人、出来るだけ賑やかな場所へと思い、歌舞伎町の居酒屋チェーンに入った。

後日談はこの時Cから聞いた。

 

俺は急遽3日程有給を取った。

この忙しい時にと上司には散々どやされたが、無理矢理もぎ取ってきた。

今日は身の回りの準備をしてからコレを一気に書いた。心の準備みたいなもんだ。Cは辞表を提出してきたそうだ。

何もそこまで…と思ったが、無理も無い。

 

俺とCは明日あの集落に行く。

本来ならAも連れて行きたいところだが、内陸だったので先日の地震では大きな被害は出てない地域だと思うが、道路状況はわからないのでスムーズに現地入りできるかが心配だ。

通常なら高速を飛ばせば3~4時間の距離だ。

 

俺はここ最近、ずっとBに呼ばれていた。

Bの夢を頻繁に見るようになったのは3ヶ月程前から。それが徐々に増えていき、毎晩になった。

そして、この1ヶ月程はどこに居てもBの視線を感じるようになった。

人ごみの中、夜道の電柱の影、マンションの窓の外。

いつもBが見ている。

俺が視線を感じて振り向くと、影がサッと隠れる。

Bが呼んでいる。あの家に行けば、何かがある。恐ろしいけど行かなければならない。

 

Cも同じことを考えていたらしいが、Cはこのまま逃げたかったらようだ。

だが俺と出会ってしまい逃げることはできないと覚悟を決めたようだった。

 

逃げられるわけがないんだ。

大学3年の時、神主からもらった瓶詰めの水、あれが破裂した。

ジャケットの胸ポケットに入れていたので、ガラス片で出来た傷がいまだにミミズ腫れのように残っている。

すぐ祖母に電話をし、そのことを話すと、あの神主一家が事故で亡くなったらしく、後継の息子たちも亡くなってしまったので神主一家の家系も絶えることになるだろうと、静かに話していた。

そして、「お前も気をつけろ」と。

 

俺を護ってくれた神主が死に、神主が持たせてくれた大切な水が無くなってしまったことは、俺にとっては死刑宣告のようなものだった。

 

そしてその翌日、祖父が死に、数日して後を追うように祖母が死んだ。

両親も死んだ。

必ず、大事な人の死の直前に、俺は嫌な夢を見た。

翌日か翌々日には、誰かが急に死ぬ。

そして、嫌な夢の内容は誰かが死んだ後に、Bの夢だったと思い出すのだ。

 

ヶ月前、親友が急死した。

死の直前、親友から電話が掛かってきた。久しぶりに話をした親友は精神を病んで居た。

そして、親友の口から、Bの名前が出た。

あの事件以降、あの話は誰にもしていない。Bの名前など知るはずもない親友は、Bが怖い、Bがやってくると怯えていた。

詳しい話を聞く間もなく、電話は切れ、その直後親友は電車に飛び込んだ。

 

これで俺の近しい人間は、一人を除いて誰も居なくなった。

会社では友人など作らないことに決めている。俺と親しくなると、災いが降りかかり呪術によって死に至る。

 

Cの家族も、全滅していた。やはりあの瓶詰めの水は破裂したそうだ。

だがCはその時まで何も無かったので、もう大丈夫だろうとタカをくくっていたらしい。

しかし、Cの家族は全滅してしまった。

そして、Cが一度抑えきれずにこの話をしてしまった大学時代の友人は、話をした翌日に自殺をしたらしい。

 

俺とCが何故生きているのか。簡単なことだ。

あの家に行くまで、俺たちの周りの誰かが死に続けるんだ。

何が起こるかはわからない。

でも、このまま俺たちが生き続けるわけにはいかない。

 

長くなったが、まともに読んでる人間はいないだろう。

目に止めてしまったことがきっかけになって

△△の呪術が災いをもたらす結果になってしまったら

それは申し訳ないと思う。

俺は俺の子を宿した妻を守りたい。

俺とCが犠牲になり、誰かに話すことで呪術の災いが分散され、弱まるのだとしたら、これは意味のあることだと思いスレをたてた。

 

以上で俺の話は終わり。

 

 

 

○感想

 この話には後日談があって、どうやらこの話は釣りらしいです。良かったですね(^^)

 しかし、呪いがない証明にはなりません。文明の利器がはびこる科学文明だからこそ、非科学的な力にすがりたい時もあるものです。

 はあ……学生時代に戻りたい。

 私の寿命を半分あげてもいいですから、戻してもらえませんか?

 サ〇ン様……あるいは、ドラ〇もん様……

 

 しかし、リアリティーに満ち溢れていて恐ろしい怪談でした。

 葛籠の中には、一体何が入っていたのでしょうか?

 空想世界とは言え、想像がつきません……

 

 

【2chの怖い話名作選】渦人形 (感想付き)

f:id:RETRO777:20210218153225p:plain

高校の頃の話。

 

高校2年の夏休み、俺は部活の合宿で某県の山奥にある合宿所に行く事になった。

現地はかなり良い場所で、周囲には500m~700mほど離れた場所に、観光地のホテルやコンビニなどがあるだけで他には何も無いけれど、なんか俺達は凄くわくわくしてはしゃいでいたのを覚えている。

 

その日の夜の事。

暇をもてあました俺達は、顧問の先生の許可を貰いコンビニまで買出しに行く事にした。

わいわい騒ぎながら10人ほどで外にでて歩き始めると、昼間はそちらのほうに行かなかったので気付かなかったが、合宿所の裏手に家らしき建物があるのが解った。

 

その建物には明かりがついていなかった。

多分空き家か民家っぽいけど、別荘か何かなんだろうと思われた。

友人が調子の乗って「あとで探検いかね?」と言い出したが、あまり遅くなると顧問の先生にドヤされるし、ひとまず買い出し終わってから、合宿所内で今後のことは考えよう、という話になった。

 

コンビニで買出しをし合宿所に戻る途中、後輩の1人が変なことを言い出した。

例の建物の玄関が少し開いていて、そこから子供がこちらを覗き込んでいたという。

俺達は「そんなベタな手にひっかからねーよ!」と後輩をおちょくったが、後輩が真顔で「マジで見たんだって!」というので、ちょっと気味が悪くなってしまい、家が見えるところまで確認に戻ったが、ドアは閉じていて人の気配も無く、特に異常は無かった。

俺達は後輩をおちょくりながら合宿所へと戻った。

 

合宿所へ戻り、2階の廊下から外を眺めると、例の家の1階部分が木の間から僅かに見えた。

俺が友人と「あそこに見えるのそうだよな?」なんて話をしていると、家のドアが僅かに開き、暗くて良く分からないが子供らしい、人影が頭だけをドアから出してこちらを覗きこんでいる。

「…え?」

俺と友人は、同時のその光景を目撃し沈黙した。

その後、最初に口を開いたのは友人だった。

 

「おい…あれって…」

友人はかなり動揺しながらそういった。

俺も恐怖というより、あまりにも唐突の事で思考が停止してしまっていて。

「子供…こっち見てるよな?」としか返せない。

 

その時、後ろの部屋から笑い声が聞こえてきた。

俺と友人はその声にびっくりし、ハッ!と我に返った。

そして、俺は「これやばくね?ばっちり見えてるよな?」というと、友人が「おれちょっと携帯持ってきて写真撮る」と、自分の部屋へと走っていった。

すると、騒ぎを聞きつけて、なんだなんだと合宿所にいる生徒が

(他校の生徒もいたので、総勢60人くらいが合宿所にいたのだが、そのうちの半分くらい、30人ほど)

2階の廊下に集まりだした。

 

子供らしき人影は、まだドアから顔のみを覗かせて、こちらを見上げているように見える。

廊下は大騒ぎになり、とうとう顧問の先生たちも何の騒ぎだとやってきた。

第一発見者の俺と友人が事情を話していると、窓から外を見ている生徒の何人かが「あ!」と声をあげ、かろうじて聞き取れる音で、パタン…とドアの閉じる音がした。

 

顧問の先生たちが外を見る頃には、ドアは閉じられ人影もなくなっており、何事も無い林と、明かりもついていない家らしき建物が見えるだけだった。

 

当然先生たちは信じてくれなかったが、ノリの良い若い先生2人が一応確認しに行ってくれることになり、合宿所の裏手へと回った。

俺達が窓から様子を見ていると、懐中電灯を持った2人が現れ、家の玄関のところで何かやっている。

どうやらドアが開くか調べているようだが、開かないようだった。

その後「誰かいますか~?」と声をかけたりしていたのだが、反応がないらしく、5分ほどで戻ってきた。

 

その後、何人かが携帯で撮影した画像も証拠として出したのだが、所詮は携帯の画質、真っ暗な画像が映っているだけで何の証拠にもならない。

俺達は先生達に「さっさと寝ろ」とまくし立てられて、自分達に割り当てられた部屋へと戻った。

 

その夜、なんか中途半端でモヤモヤして寝れない俺達が、これから確認に行くか、それとも昼間行くかを話し合っていると、部屋の窓がドンドン!と叩かれた。窓の外に人影も見える。

俺達はさっきのこともありビビりまくっていると、外から「おーい、あけてくれ!」と声が聞こえてきた。

カーテンをあけると、そこには昼間仲良くなった他校の生徒5人がいた。

やつらはどうも、窓の外にある20cmくらいの幅のでっぱりをつたって、俺達の部屋までやってきたらしい。

 

5人を部屋の中にいれると、どうもやつらも俺達と同じ話をしていたらしく、これから例の家に行く事にしたので、俺達を誘いに来たらしい。

俺達もそれで決心が付いたので、これから肝試し?に行く事になった。

 

メンツは、うちの学校からは俺、A也、B太。

他校からは、C広、D幸、E介。

他のやつは、何だかんだと理由をつけて結局来なかった。

 

俺達は5人が通ってきた窓の出っ張りをつたい外にでると、先生に見付からないように一端道路に出て、そこから大回りに問題の家へと向かった。

一応、家の周りは合宿所の2階廊下から丸見えなので、残ったやつ何人かが、異常があれば廊下から懐中電灯で合図してくれる、という計画になっていた。

 

家の前につくと流石に不気味だった。

遠目には分からなかったのだが、壁には苔が生えているし、あちこちに蔦も絡まっている。

しかも、外から見える窓は全て板が打ち付けられていて、だいぶ長い事放置された場所のようだ。

 

最初C広とA也とB太が家の周りを確認しに行ったのだが、俺が開かない事は分かっていたが、何気にドアノブを回すとすんなりとドアが開いてしまった。

急いで3人を呼び戻し、俺達は中へと入る事にした。

 

中に入ると、夏場という事もあり室内の湿気が凄くかび臭い。

家の中を探索してみると、埃っぽくカビ臭くはあるのだが、室内は荒らされた様子も無く、家具も何も無いのでやたら広く感じた。

 

1階を探索していると、E介が「2階から笑い声しね?」と言い出した。

俺達は耳を澄ましてみたが、笑い声は聞こえない。

E介に「気のせいじゃないか?」といったのだが、E介は気になるらしく、「見に行きたい」と言い出した。

 

しかし、まだ1階の探索も終っていないので、仕方なく3人ずつのグループに分けて、片方はそのまま1階を、もう片方は2階を探索する事にした。

グループわけは簡単で、同じ学校の俺とA也とB太がそのまま1階を、別の学校のC広とD幸とE介が2階を探索する事にして、何かあったら階段のところでおちあう事にして別れた。

 

暫らく探索していると、2階から突然

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

と、場違いに明るい笑い声が聞こえてきた。

そしてすぐに「おいE介?どうした?おい!」と、C広とD幸の狼狽した声が聞こえてきた。

 

俺達が大慌てで2階に上がると、一番奥の部屋に3人はいた。

笑い声の主はE介で、窓のほうを向いてまだ

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」と大声で笑っている。

そしてその横にC広とD幸がいて、真っ青な顔でE介を揺さぶったり頬を引っ叩いたりしていた。

 

俺達もただ事では無いと、3人のところに行って前に回りこんでE介の顔を見たとき、俺は今、自分たちが置かれている状況の深刻さに始めて気が付いた。

E介はほんとにおかしそうに笑い声を上げているのだが、顔は無表情で、しかも目からは大粒の涙を流している。

それに何か臭いとおもったら、どうやら失禁しているらしい。

 

E介はまるで、俺達の事が見えていないかのように泣きながら笑い続けている。

俺達が狼狽してE介に呼びかけていると、その場で一番冷静だったB太が

「とりあえずE介このままにしておけないし、合宿所まで運ぼう」と言ってきた。

 

そして、俺達はE介の手足と肩をもち、外へと運び出そうと1階までE介を運んだ。

が、そこで問題がおきた。

ドアを開けようとしたB太が、声を震わせながら大声で「ドア開かねーよ!」と言ってきた。

俺達はE介を廊下に降ろし、みんなでドアを開けようとしたのだが、さっきは簡単に開いたのに今はびくともせず、6人の中で一番体格の良いA也がドアにタックルしてみたのだが、それでもまるで開く気配が無い。

 

俺達は軽くパニックになり顔を見合わせていると、2階から微かに「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と、まるで抑揚の無い機械的な声というか、音というかが聞こえてきた。

E介はまだ床に寝転がされたまま笑っている。

 

とにかく外にでないといけない、そう考えた俺は、1階のリビングが、ガラスのサッシのみで割れば出れそうな事を思い出し、4人にそれを伝えると、リビングへと向かう事にした。

その時、ふと俺は階段の上を見て絶句した。

 

階段の踊り場の少し上ところから、子供の顔がのぞきこんでいる。

月明かりが逆光になっていて、表情とかは何も分からないが、顔のサイズや髪型からさっきの子供とわかった。

相変わらず「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も聞こえてくる。

どうやら声の主はこの子供らしい。

 

しかし何かがおかしい、違和感がある。

俺はすぐに違和感の正体に気が付いた。

子供は階段の手すりからかなり身を乗り出しているはずなのだが、なぜか頭しか見えない。

あれだけ乗り出せば、肩辺りは見えても良いはずなのだが…

俺がそんな事を考えながら階段の上を凝視していると、C広が

「おい何してんだ、早く出ようぜ、ここやべーよ!」と、俺の腕を掴んでリビングへと引っ張った。

 

俺には一瞬の事に見えたが、どうも残りの4人がE介をリビングへ運び込み、窓ガラスを割り、打ち付けてある板を壊すまで、ずっと俺は上の子供を凝視していたらしい。

俺は何がなんだか解らず、とりあえず逃げなければいけないと、皆でE介を担いで外へとでた。

外へ出ても相変わらず、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声は、家の中から聞こえてくる。

俺達はE介を担ぎ、D幸が合宿所へ先生たちを呼びに行った。

 

その後、E介は救急車で運ばれた。

俺達は先生方に散々説教をされ、こんな事件があったので合宿はその日で中止となった。

 

帰宅準備をしていた昼頃、十台くらいの数の車が合宿所にやってきた。

中から20人ほどのおじさんやおじいさん、あと地元の消防団らしき人が降りて、顧問の先生たちと何か話しをすると、合宿所の裏に回り、例の家の周りにロープのようなものを貼り、柵?のようなものを作り始めた。

俺達は何事なのかと聞いてみたが、顧問の先生たちは何も教えてくれず、そのままバスで地元へと帰った。

 

E介は2日ほど入院していたが、その後どこか別の場所へ運ばれ、4日後には何事もなかったように帰ってきた。

後から事情を聞いてみると、E介には、家に入ったところから昨日までの記憶が何もなかったらしい。

 

E介が帰ってきた日の夜、俺が自分の部屋で寝転がってメールしていると、一瞬

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」

という、あの声が聞こえた気がした。

びっくりして起き上がり、カーテンを開けて外を見たりしたが、いつもの景色で何も無い。

俺は「気のせいかな?」と、起き上がったついでに1階に飲み物を取りに行くことにした。

 

俺の家はL字型になっていて、自室は車庫の上に乗っかるような形になっている。

冷蔵庫からペットボトルのお茶を取り出し2階へ上がると、丁度階段を上がったところの窓のカーテンの隙間から、僅かに自室の屋根の部分が少し見えた。

すると、屋根の上に何かがいる…

 

この前あんな事があったばかりなだけに、ビビりまくった俺が窓からカーテンを少し開けて外の様子をのぞくと、屋根の上に和服を着た子供が、両手を膝の上にそろえて正座しているのが見えた。

それだけでもかなり異様な光景なのだが、それだけではなかった。

子供は体を少し前かがみにして、下を覗きこむような姿勢なのだが、首のあるはずの部分から、細長い真っ直ぐの棒のようなものが1mほどのびていて、その先にある頭が、俺の部屋の窓を覗き込んでいた。

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声も、窓越しにわずかに聞こえてくる。

 

俺はあまりの出来事に声も出せず、そのまま後ずさりすると1階へ下りた。

寝ている親を起そうかとも思ったが、これで起してあれがもういなかったらそれこそ恥ずかしい…

その時なぜかそう思った俺は、そのまま1階のリビングで徹夜した。

たしか朝4時過ぎまで、「ホホホ…」という声は聞こえていたと思う。

 

翌朝、恐る恐る部屋に戻ってみたが、あれはいなくなっており、室内にも特に変わった部分は無かった。

 

その日の昼頃、自宅の電話に顧問の先生から電話があった。

この前の件で話があるからすぐに来いという。

昨晩のこともあった俺は、嫌な予感がして大急ぎで学校へと向かう事にした。

 

学校へ到着すると、生徒会などで使っている会議室に呼ばれた。

会議室に入ると、A也、B太、それにC広とD幸までいる。

更に、うちの学校とC広たちの学校の顧問の先生たち、それと見た事の無いおじさんたちも数人いた。

 

まず、顧問の先生のうち1人が話し始めた。

 

要約すると、E介にまた同じ症状だでたらしく、とある場所に運ばれたらしい。

そして、俺達に「昨夜おかしな事はなかったか?」と聞いてきた。

俺はすぐさま昨夜のあれを思い出し

「あのー、深夜になんか変なのが俺の部屋を覗き込んでるのが見えて…」

と事情を話した。

A也、B太、C広、D幸には特に異常はなかったらしい。

するとC広が

「そういやお前(俺)さ、あの家の中で、階段の上眺めながらボーっとしてたよな?あれ関係あるんじゃないか?」

と言い出した。

そういえば…

俺はあのときの事を思い出し、皆に

「あの時さ、変な笑い声みたいなのと、なんか子供の姿見たよな?」

と聞いてみた。

しかしみんなは、声はずっと聞こえていたけど、子供の姿は最初のドアのところで見ただけで、家の中では見ていないという。

 

俺達がそんなやり取りをしていると、さっきまで黙っていたおじさんが、事件の詳細を話し始めた。

非常に長い話だったので要約すると。

 

俺達がであったのは、「ひょうせ」と呼ばれるものらしい。

これはあの土地特有の妖怪のようなもので、滅多に姿を見せないが、稀に妊婦や不妊の家の屋根に現れて、笑い声をあげるらしい。

そうすると、妊婦は安産し、不妊の夫婦には子供が産まれるという、非常に縁起の良いものだそうな。

ただし、理由は全く分からないが、数十年に一度、なぜか子供を襲い憑り殺してしまうという、厄介な存在でもあった。

 

ちなみにあの家は、全くいわくも何もなく、ただ「ひょうせ」が偶然現れただけの場所なのだが、「ひょうせ」が子供を憑り殺そうとした場合、それに対する対抗策があり、「ひょうせ」が最初に現れた場所に結界を作り封じ込め、簡易的な祠をつくって奉ることで、殺されるのを防ぐ事ができるらしい。

合宿所から帰る直前、俺達が見たのは、その封じ込め作業だったわけだ。

 

おじさんは続けて、ただ今回は何かおかしいのだという。

普通、祠をつくって奉ればそれで終るはずなのだが、今回はどういうわけだが逃げられてしまって、E介がまた被害に会い、しかも俺のところにまで現れている。

それに、そもそも現れるだけでも珍しい「ひょうせ」が、自分達の村とその周辺以外に現れる、というのも全く前例がないうえに、「ひょうせ」が前回子供を襲ったのは20年ほど前で、早すぎるのだそうな。

 

ただ、おかしいおかしいといっても、現実に起きてしまっているのだから仕方が無い。

俺達は学校で、村から来たお坊さんに簡易的な祈祷をしてもらい、お札を貰って

「君たちはこれで大丈夫だろう」

と言われ帰された。

ちなみに、E介に関しては、暫らくお寺で預かって様子を見て、その間にもう一度祠を建てて、「ひょうせ」を奉ってみるとの事だった。

 

学校から帰された俺達は、各々迎えに来ていた親に連れられて帰る予定だったのだが、話し合って、ひとまず学校から一番近い俺の家に全員で泊まることにした。

安全と言われていてもやはり不安だし、全員でいたほうが少しは心細く無いと思ったからだった。

 

その夜、俺達が部屋でゲームしていると、コン…コン…コン…コン…と、窓を規則的に叩く音がした。

さっき説明した通り、俺の部屋は車庫の上にあり、壁もほぼ垂直なので、よじ登って窓を叩くなどまずできない。

しかも、その窓は昨晩、例の子供が覗き込んでいた窓だ…

状況が状況だけに、全員が顔をこわばらせていると、B太が強がって

「なんだよ、流石に誰かの悪戯か風のせいだろ?」

と、カーテンを開けようとした。

俺は大慌てでB太に事情を話し、カーテンをあけるのを踏みとどまらせた。

 

窓を叩く音はまだ続いている。

D幸が、「やっぱ正体確認したほうがよくね?分からないままのほうが余計こえーよ…」と言ってきた。

たしかに、何かその通りな気がした。

なんだか分からないものが一晩中窓を叩いている状況なんて、とても耐えられそうに無い。

俺達は階段のところまで移動し、カーテンを少し開けて、隙間から俺の部屋を見てみた。

 

いた…

 

昨日のあれが、やはり昨日と同じように首をらしき棒を伸ばし、窓から俺の部屋を覗き込んでいる。

そして時々、コン…コン…と頭を窓にぶつけている。

「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い笑い声のようなものも聞こえてきた。

音の正体はこれだった。異様な光景だった。

そして、昨日は気付かなかったが、あれは子供と言うより、和服を来た人形のようだった。

頭が窓にぶつかる音も、人間の頭と言うより、中身が空洞の人形のような音だ。

C広が、「ひょうせって、今日もう一度封じ込めたんじゃねーのかよ…」と呟いた。

その時、俺の親父が騒ぎに気付いて、「お前ら何やってるんだ?」と階段を上がってきた。

その声にびっくりしたA也が、思わず腕を窓にぶつけて、ドン!と大きな音を立ててしまった。

 

”それ”の棒の先にある頭だけが、カクンッという感じでこっちを向いた。

俺達は顔をはっきりと見た。

”それ”はおかっぱ頭で、笑顔の人形だった。ただし、ただの人形ではない。

顔は人形特有の真っ白な肌なのだが、笑顔のはずの目は中身が真っ黒で、目玉らしきものが見えない。

口も同じで、唇らしきものもなく、そこにはやはりぽっかりと真っ暗な、三日月状の穴のようなものがある。

それでも、目や口の曲線で、「にっこり」と言う感じの笑顔だと分かるのが余計に不気味だった。

 

親父が「だからお前ら何やってるんだ?」と、窓のところに来てカーテンを全開にすると、それはサッ!と屋根の影に隠れて見えなくなった。

が、親父にも一瞬、何かがそこにいたのは分かったらしい。

親父は大慌てで1階に降りると、携帯でどこかに電話をし始めた。

どうやら、昼間祈祷をしてくれたおぼうさんや、おじさん達の連絡先を聞いていたらしく、そこと顧問の先生のところに電話しているらしい。

 

その後、影に隠れたきり、”それ”は二度と姿を現さなかった。

 

朝になり、昨日のおじさんたちや顧問の先生などが俺の家に来た。

とりあえず異常事態ということで、全員を合宿所近くにあるお寺まで連れて行くという。

みんなの親たちも俺の家に来たのだが、おじさんが

「被害が更に拡大するといけないから、親御さんは来ないほうがいい」

と言うことで、行くのは俺達だけになった。

俺達は着の身着のまま車に乗せられ出発した。

 

昼前にお寺に到着した。

お寺に入ると、ジャージ姿でゲッソリとした感じのE介が、俺達を出迎えた。

E介によると、あれから色々あったが、なんとか今のところは助かっているらしい。

本堂に入ると、お坊さんと昨日のおじさんが、昨晩の出来事を詳しく教えてほしいと言ってきた。

 

俺達が順番に状況を話していると、人形の姿の説明のところで、おじさんが

「ちょと待った、人形?首が長い?何の話をしているんだ?」

と驚いた顔で言ってきた。

そして、俺達が昨日みた人形の姿を改めて説明すると、お坊さんと

「いや、これはひょうせじゃないぞ、どうなってるんだ?」

「おかしいとおもったんだ。色々辻褄が合わない」

と、2人で話し合い始めた。

そして暫らく話し合った後、俺達に状況を説明してくれた。

 

結論から言えば、「ひょうせ」に憑りつかれていたというのは全くの勘違いで、どうも俺達に付き纏っているものの正体は、全く別の何からしい。

俺は、今更それはねーだろ…と思った。

 

おじさんが続けた。

最初状況を聞いたとき

・子供のような姿

・笑い声

・生徒がおかしくなって笑いながら泣いている

・村の近く

と言う状況から、「ひょうせ」だと思ったらしいが、どうも今詳しく話を聞いてみると、「ひょうせ」のしわざと症状は似ているが、姿形がまるで伝承や過去の目撃証言と違うらしい。

そもそも「ひょうせ」というのは、子供くらいの姿をした毛むくじゃらの猿のような姿で、服も着ていないしおかっぱ頭でもないし、当然、首ものびたりもしないようだ。

笑い声も、俺達の聞いたようようの無い機械的なものではなく、笑い声といっても、猿の鳴き声に近いとの事だった。

 

俺達は途方にくれてしまった。

ぶっちゃけ、この寺に来れば全部解決すると思い込んでいたのに、今更「なんだかわからない」では、どうしたらいいのか…

 

室内が重苦しい雰囲気になり、皆しばらく沈黙していると、お坊さんがこう言ってきた。

「とりあえず、何か良くないものがいるのは間違いない。少し離れたところに、こういう事に詳しい住職がいるので、その人を応援に呼んでくる。暫らく皆、座敷でまっていてほしい」

そういうと、車に乗りどこかへ行ってしまった。

俺達は座敷に通され呆然としていた。

おじさんはしきりにどこかへ電話をし、かなりもめているように見えた。

 

夕方になり、お坊さんが別のお坊さんを連れて戻ってきた。

お坊さんが戻ってくると同時に、さっきのおじさんが携帯を片手に「えらい事になった!」と、お坊さんのところに走り寄って来た。

話を聞いていると、どうも村の子供が1人、E介と同じ症状でいるところを発見されたらしく、これからこっちへつれてくるという。

この寺のお坊さんが俺達に

「とりあえず後で話をするから、ひとまず君たちはさっきの座敷で待っていてくれ」

というと、大慌てで2人で本堂のほうへと歩いていった。

 

それから15分ほどすると、ワゴン車がやってきた。

車の中からは、E介のときと同じように、けたたましい笑い声がする。

車の扉が開き、中から数人の大人と、笑い声を上げる以外身動き一つしない中学生くらいの子供が運び出され、本堂へと連れて行かれた。

暫く本堂の中から

「アハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!」

という、笑い声とお経を読む音が聞こえていたが、それも10分くらいで収まり静かになった。

 

それから更に15分ほどすると、お坊さん2人が俺達のいる座敷に入ってきて、色々と説明し始めた。

さっきの子供のほうは消耗が激しいので、本堂に布団を敷いてそのまま寝かせているらしい。

応援でやって来たお坊さんによると、どうも話を聞いた感じやさっきの子供の様子から見て、幽霊や妖怪のようなものが原因ではなく、何かしらの呪物が原因ではないかという。

特に根拠があるわけではないけれど、感覚的にそう感じるらしい。

そして、呪物の類だとすると、と前置きし、恐らく祈祷で呪物と君たちの縁を切ってしまえば、なんとかなるのではないかと。

そして、できればその人形も供養してしまいたい、とのことだった。

 

とりあえずそういう話でまとまったという事で、俺達もそれで解決できるなら早くしてほしいと、話がまとまった。

と、その前に、俺はずっと我慢していたのだがトイレに行きたくなった。

事情を話し、「でも一人じゃなぁ…」と思っていると、他のやつも全員我慢していたらしく、結局6人で連れションすることになった。

 

トイレからの帰り道、本堂へ続く廊下を歩いていると、どこからか「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という、例の抑揚の無い声が聞こえてきた。

場所は分からないが、あれがすぐ近くにいるようだ…

C広が「近くにいるよな…」というと、A也が「かなり近いぞ、やばくね?」と返した。

たしかにかなり近い。でも姿は見えない。

すると最後尾にいたE介とD幸が「やばい、早く本堂に逃げろ!」と、窓の上のほうを指差しながら叫んだ。

 

俺達が指差した方向へ振り向くと、それはいた…

前と同じように屋根から頭だけを突き出し、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と笑いながら、例の真っ黒な目と口の顔をこちらに向けながら、ニコニコと笑っている。

俺たちは全力で逃げ出した。

 

本堂に着くと、お坊さん2人とさっきのおじさんが待っていた。

今になって気付いたのだが、おじさんはどうもこの村の村長さんらしい。

俺達が事情を話すと、お坊さん達はすぐさま俺達を座らせ、お経を読み始めた。

 

暫らくお経を読んでいると、本堂の天井のほうから「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という例の笑い声と、コツ…コツ…という、俺の部屋で聞いたあの音が聞こえてきた。

俺達はビビりまくって身を寄せ合っていた。

 

暫らくすると声が聞こえなくなった。

俺が「終ったか?」と言い切らないうちに、今度は本堂の横の庭のほうから、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という声が聞こえ始めた。

そして、薄暗くなり始めた本堂の障子に、夕日に照らされたあの人形のあたまが映し出された。

あたまはユラユラ揺れながら、相変わらずあんぽ不気味な笑い声で笑っている。

 

その時、俺は恐怖心と不安感と連日の寝不足で、もう耐えられなくなって、ちょっとおかしくなっていたんだとおもう。

人形の影を見て、恐怖心よりもその姿にイラつきはじめた。

ユラユラ揺れている姿を見ると、とにかくなんだか良く分からないがムカついてきて、とうとう我慢できなくなった。

 

俺はお坊さん達がお経を読んでいる横の鉄の燭台を掴むと、蝋燭もささったまま引き抜き、周りが制止するのも振りきり障子を開けた。

目の前にあの人形の顔があった。

一瞬俺は恐怖心に襲われたが、怒りとイラつきが勝って、そのまま燭台をぶら下がっている人形の頭めがけ

「ふざけんなーーーーーーーーーー!」

と叫びながら振り下ろした。

バキッ!という音がして、燭台の先端が人形の顔にめり込み、そのまま人形は地面に落下した。

俺は裸足のまま庭に下りると、更に燭台を振りかぶり人形に打ち下ろした。

すると、なにか頭の中に妙な感覚が芽生え始めた。

人形はそれでもなお、「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」と無機質に笑っている。

 

俺はおかしくも無いのに笑いたくなり、なきたくも無いのに目からボロボロと涙が零れ落ちてくる。

明らかにE介たちと同じ状況になりつつあるのだが、それでも俺は燭台を振りかぶり、人形に打ち下ろすのをやめなかった。

あとから話を聞くと、俺はゲラゲラと笑いながら、無表情でボロボロと涙を流していたらしい。

 

暫らくそんな状態が続いていると、どうも燭台に残っていた蝋燭の火が人形の服に燃え移ったらしく、人形が煙を上げて燃え始めた。

友人たちによると、人形の「ホホホ…ホホホ…ホホホ…」という笑い声と、俺の絶叫が交じり合い、薄暗くなり始めた周囲の雰囲気とあわさって、異様な状況だったという。

 

それでも俺は、笑い泣きしながら殴り続けていると、どこを殴ったのかよくわからないが、メキッ!という鈍い音がした。

その途端、俺の中の妙な感情が消えた。

消えたというか、急にシラケてしまったといえば良いのだろうか、とにかく人形に対するイラつきも、笑いたいという気持ちも、泣きたいという気持ちも、急になくなってしまった。

 

俺はその場にヘタり込み、友人たちやおじさんが「…大丈夫か?」と心配そうに近付いてきた。

人形はもう笑ってもいないし動きもしないが、燃えたままでは不味いので、友人たちとおじさんが砂を掛けて消していた。

 

理由は分からないが、俺は何故か全て解決したような、そんな良い気分になっていた。

この騒ぎの中、お坊さん2人はずっとお経を読み続けていたらしい。

人形(もう殆ど残骸に近かったが…)の事は明日詳しく調べる事になり、

箱に入れてお札を貼り、本堂に安置する事になった。

俺達はお坊さんの好意で、そのままお寺に泊まることにした。

 

翌朝。俺達は本堂に呼ばれた。

どうやら、お経のお陰なのか、俺がぶち切れたのが原因なのか、理由ははっきりしないが、どうも一応解決はしたらしい。

そして、人形はこのままこのお寺で供養する事になったのだが、結局この人形が何なのか、その辺りは謎のままだった。

ただ、燃え残った人形の胴体に、焼け焦げ消えかかった文字で「寛保二年」という記述と、完全に燃えて文字数しかわからない作者の名前6文字

それと、はっきりとは分からないので、残っている文字の痕跡からの推測だが、「渦人形」という単語が読み取れた。

お坊さんが言うには、とにかく正体は不明だが、何らかの呪物である事はまちがいないらしい。

燃え残った残骸に、頭と動を繋ぐ棒の部分があったのだが、そこにびっしりと、何か呪術的な模様が書かれていた痕跡があるのが、確認できたとの事だった。

 

その後、今に至るまで、俺も含め当時のメンバーには、知る限り何も起こっていない。

お寺のお坊さんからは、人形の正体がわかったら連絡をくれるという話だったが、あれから数年経つが、未だその連絡も来ない。

 

 

 

○感想

 「ひょうせ」→「渦人形」へのまさかの2段オチにして……

燭台と蠟燭と火とで殴りつける、まさかの物理攻撃で勝利を果たす……怪談の中でも意表を突く構成でした。

最後、正体不明のまま、含みを持たせて終わるのも、怪談として美しいですね。

一体、どんな目的で、どうやって作られたのか、非常に気になるところですが、2体目がないことを願います。

 

【2chの怖い話名作選】ヤマノケ (感想付き)

f:id:RETRO777:20210218152034j:plain

一週間前の話。

娘を連れて、ドライブに行った。

なんてことない山道を進んでいって、途中のドライブインで飯食って。

で、娘を脅かそうと思って舗装されてない脇道に入り込んだ。

 

娘の制止が逆に面白くって、どんどん進んでいったんだ。

そしたら、急にエンジンが停まってしまった。

 

山奥だからケータイもつながらないし、車の知識もないから娘と途方に暮れてしまった。

飯食ったドライブインも歩いたら何時間かかるか。

 

で、しょうがないからその日は車中泊して、次の日の朝から歩いてドライブイン行くことにしたんだ。

 

車内で寒さをしのいでるうち、夜になった。

夜の山って何も音がしないのな。

たまに風が吹いて木がザワザワ言うぐらいで。

 

で、どんどん時間が過ぎてって、娘は助手席で寝てしまった。

俺も寝るか、と思って目を閉じてたら、何か聞こえてきた。

 

今思い出しても気味悪い、声だか音だかわからん感じで「テン(ケン?)・・・ソウ・・・メツ・・・」って何度も繰り返してるんだ。

最初は聞き間違いだと思い込もうとして目を閉じたままにしてたんだけど、音がどんどん近づいてきてる気がして、たまらなくなって目を開けたんだ。

 

そしたら、白いのっぺりした何かが、めちゃくちゃな動きをしながら車に近づいてくるのが見えた。

形は「ウルトラマン」のジャミラみたいな、頭がないシルエットで足は一本に見えた。

そいつが、例えるなら「ケンケンしながら両手をめちゃくちゃに振り回して身体全体をぶれさせながら」向かってくる。

 

めちゃくちゃ怖くて、叫びそうになったけど、なぜかそのときは「隣で寝てる娘がおきないように」って変なとこに気が回って、叫ぶことも逃げることもできないでいた。

そいつはどんどん車に近づいてきたんだけど、どうも車の脇を通り過ぎていくようだった。

通り過ぎる間も、「テン・・・ソウ・・・メツ・・・」って音がずっと聞こえてた。

 

音が遠ざかっていって、後ろを振り返ってもそいつの姿が見えなかったから、ほっとして娘の方を向き直ったら、そいつが助手席の窓の外にいた。

近くでみたら、頭がないと思ってたのに胸のあたりに顔がついてる。

思い出したくもない恐ろしい顔でニタニタ笑ってる。

 

俺は怖いを通り越して、娘に近づかれたって怒りが沸いてきて、「この野郎!!」って叫んだんだ。

叫んだとたん、そいつは消えて、娘が跳ね起きた。

 

俺の怒鳴り声にびっくりして起きたのかと思って娘にあやまろうと思ったら、娘が

 

「はいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれたはいれた」

 

ってぶつぶつ言ってる。

 

やばいと思って、何とかこの場を離れようとエンジンをダメ元でかけてみた。

そしたらかかった。

 

急いで来た道を戻っていった。

娘はとなりでまだつぶやいている。

 

早く人がいるとこに行きたくて、車を飛ばした。

ようやく街の明かりが見えてきて、ちょっと安心したが、娘のつぶやきが「はいれたはいれた」から「テン・・ソウ・・メツ・・」にいつの間にか変わってて、顔も娘の顔じゃないみたいになってた。

 

家に帰るにも娘がこんな状態じゃ、って思って、目についた寺に駆け込んだ。

夜中だったが、寺の隣の住職が住んでるとこ?には明かりがついてて、娘を引きずりながらチャイムを押した。

 

住職らしき人が出てきて娘を見るなり、俺に向かって「何をやった!」って言ってきた。

山に入って、変な奴を見たことを言うと、残念そうな顔をして、気休めにしかならないだろうが、と言いながらお経をあげて娘の肩と背中をバンバン叩き出した。

 

住職が泊まってけというので、娘が心配だったこともあって、泊めてもらうことにした。

娘は「ヤマノケ」(住職はそう呼んでた)に憑かれたらしく、49日経ってもこの状態が続くなら一生このまま、正気に戻ることはないらしい。

住職はそうならないように、娘を預かって、何とかヤマノケを追い出す努力はしてみると言ってくれた。

妻にも俺と住職から電話して、なんとか信じてもらった。

 

住職が言うには、あのまま家に帰っていたら、妻にもヤマノケが憑いてしまっただろうと。

ヤマノケは女に憑くらしく、完全にヤマノケを抜くまでは、妻も娘に会えないらしい。

 

一週間たったが、娘はまだ住職のとこにいる。

毎日様子を見に行ってるが、もう娘じゃないみたいだ。

ニタニタ笑って、なんともいえない目つきで俺を見てくる。

早くもとの娘に戻って欲しい。

 

遊び半分で山には行くな。

 

 

 

○感想

 ヤマノケの所業がタチ悪すぎて、非常に胸糞悪い点もありますが、何が一番胸糞悪いかと言えば、嫌がる娘を後目に、調子に乗った悪ふざけで山に入っていった「俺」ですね。住職が「俺」に向かって「何をやった!」と怒鳴りつけたのも、そこらへんに理由があるのではないでしょうか?

 しかし、その分、教訓がしっかりしている怪談です。

 「遊び半分で山には行くな」

 

……田舎育ちの私も、似たような注意勧告を受けて育ちました。

 ヤマノケはいなくとも、類する何かがいるかもしれません。

【2chの怖い話名作選】ビデオメッセージ (感想付き)

会社の同僚が亡くなった。

フリークライミングが趣味のKという奴で、俺とすごく仲がよくて家族ぐるみ(俺の方は独身だが)での付き合いがあった。

 

Kのフリークライミングへの入れ込み方は本格的で、休みがあればあっちの山、こっちの崖へと常に出かけていた。

 

亡くなる半年くらい前だったか、急にKが俺に頼みがあるといって話してきた。

「なあ、俺がもし死んだときのために、ビデオを撮っておいてほしいんだ」

 

趣味が趣味だけに、いつ命を落とすかもしれないので、あらかじめビデオメッセージを撮っておいて、万が一の際にはそれを家族に見せてほしい、ということだった。

俺はそんなに危険なら家族もいるんだから辞めろといったが、クライミングをやめることだけは絶対に考えられないとKはきっぱり言った。いかにもKらしいなと思った俺は撮影を引き受けた。

 

Kの家で撮影したらバレるので、俺の部屋で撮ることになった。

白い壁をバックに、ソファーに座ったKが喋り始める。

 

「えー、Kです。このビデオを見てるということは、僕は死んでしまったということになります。

○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本当にありがとう。僕の勝手な趣味で、みんなに迷惑をかけて本当に申し訳ないと思っています。

僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。僕は天国で楽しくやっています。

皆さんと会えないことは残念ですが、天国から見守っています。

××(娘の名前)、お父さんはずっとお空の上から見ています。だから泣かないで、笑って見送ってください。ではさようなら」

 

もちろんこれを撮ったときKは生きていたわけだが、それから半年後本当にKは死んでしまった。

ライミング中の滑落による事故死で、クライミング仲間によると、通常、もし落ちた場合でも大丈夫なように下には安全マットを敷いて登るのだが、このときはその落下予想地点から大きく外れて落下したために事故を防ぎきれなかったのだそうだ。

 

通夜、告別式ともに悲壮なものだった。

泣き叫ぶKの奥さんと娘。俺も信じられない思いだった。まさかあのKが。

 

一週間が過ぎたときに、俺は例のビデオをKの家族に見せることにした。

さすがに落ち着きを取り戻していたKの家族は、俺がKのメッセージビデオがあるといったら是非見せて欲しいと言って来たので、ちょうど初七日の法要があるときに親族の前で見せることになった。

 

俺がDVDを取り出した時点で、すでに泣き始める親族。

「これも供養になりますから、是非見てあげてください」

とDVDをセットし、再生した。

 

ヴーーーという音とともに、真っ暗な画面が10秒ほど続く。

あれ?撮影に失敗していたのか?と思った瞬間、真っ暗な中に突然Kの姿が浮かび上がり、喋り始めた。

あれ、俺の部屋で撮ったはずなんだが、こんなに暗かったか?

 

「えー、Kです。このビデオを・・るということは、僕は・・んでしまっ・・いう・・ります。

○○(奥さんの名前)、××(娘の名前)、今まで本・・ありが・・・」

 

Kが喋る声に混ざって、さっきからずっと鳴り続けているヴーーーーーーという雑音がひどくて声が聞き取りにくい。

 

「僕を育ててくれたお父さん、お母さん、それに友人のみんな、僕が死んで悲しんでるかもしれませんが、どうか悲しまないでください。

僕はズヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア××(娘の名前)、お父さん死んじゃっヴァアアアアアアアアアアアアア死にたくない!死にズヴァアアアアアアアにたくないよおおおおヴヴァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア、ザッ」

 

背筋が凍った。

 

最後の方は雑音でほとんど聞き取れなかったが、Kの台詞は明らかに撮影時と違う断末魔の叫びのような言葉に変わり、最後Kが喋り終わるときに暗闇の端から何かがKの腕を掴んで引っ張っていくのがはっきりと見えた。

 

これを見た親族は泣き叫び、Kの奥さんはなんて物を見せるんだと俺に掴みかかり、Kの父親は俺を殴りつけた。奥さんの弟が、K兄さんはいたずらでこういうものを撮るような人じゃないとなだめてくれたおかげでその場は収まったが、俺は土下座をして、すぐにこのDVDは処分しますといってみんなに謝った。

 

翌日、DVDを近所の寺に持っていったら、処分をお願いしますという前に住職がDVDの入った紙袋を見るや否や「あ、それはうちでは無理です」と。

 

代わりに、ここなら浄霊してくれるという場所を教えてもらい、行ったがそこでも「えらいとんでもないものを持ってきたね」と言われた。

 

そこの神主(霊媒師?)によると、Kはビデオを撮った時点で完全に地獄に引っ張り込まれており、何で半年永らえたのかわからない、本来ならあの直後に事故にあって死んでたはずだと言われた。

 

 

 

○感想

 同じく2chの怖い話に数えられる「あなたの娘さんは地獄に落ちました」とほぼ同じ流れですね。一体、Kは何をした結果、地獄に引きずり込まれるに至ったんでしょうか?凄く気になります。

 「俺」の立場は悲しいですね。

 フェイク動画などが溢れる上に、人の考えていることが分からない現在、遺族としては、俺が合成動画を作ったとしか思われません。

 しかし、後半二つの住職、神主の「あ、それはうちでは無理です」「えらいとんでもないものを持ってきたね」という発言……素晴らしく仕上がった怪談ではないかと思います。

【2chの怖い話名作選】しっぽ (感想付き)

f:id:RETRO777:20210218171645p:plain

これは、俺の祖父の父(俺にとっては曾じいちゃん?)が体験した話だそうです。

大正時代の話です。大分昔ですね。曾じいちゃんを、仮に「正夫」としときますね。

 

正夫は狩りが趣味だったそうで、暇さえあれば良く山狩りに行き、イノシシや野兎、キジなどを獲っていたそうです。

猟銃の腕も大変な名人だったそうで、狩り仲間の間ではちょっとした有名人だったそうです。

「山」という所は、結構不思議な事が起こる場所でもありますよね。俺のじいちゃんも、正夫から色んな不思議な話を聞いたそうです。

今日は、その中でも1番怖かった話をしたいと思います。

 

その日は、カラッと晴れた五月日和でした。正夫は、猟銃を担いで1人でいつもの山を登っていました。愛犬のタケルも一緒です(ちなみに秋田犬です)。

山狩りの経験が長い正夫は、1人で狩りに行く事が多かった様です。その山には正夫が自分で建てた山小屋があり、獲った獲物をそこで料理して、酒を飲むのが1番の楽しみでした。

 

その日は早朝から狩りを始めたのですが、獲物はまったく捕れませんでした。既に夕方になっており、山中は薄暗くなってきています。

正夫は「あと1時間くらい頑張ってみるか」と思い、狩りを続ける事にしました。

 

それから30分ほど経った時です。正夫が今日の獲物をほぼ諦めかけていると、突然目の前に立派なイノシシが現れました。子連れです。

正夫は狙いを定め弾を撃とうとしましたが、突然現れた人間にビックリしたイノシシは、急反転して山道を駆け上がって行きます。

正夫は1発撃ちましたが、外れた様です。愛犬のタケルが真っ先にイノシシを追います。正夫もそれに続き、険しい山道を駆け登りました。

 

15分ほど追跡したでしょうか。とうとう正夫はイノシシの親子を見失ってしまいました。

タケルともはぐれてしまって途方に暮れていた所、遠くでタケルの吠える声が聞こえます。その吠え声を頼りに、正夫は山道を疾走しました。

 

さらに10分ほど走った所にタケルはいました。深い茂みに向かって激しく吠えています。

そこは、左右に巨大な松の木がそびえており、まるで何かの入り口の様にも見えます。正夫は、そこを良く知っていました。

 

狩り仲間の、いえその周辺の土地に住む全ての人々の、暗黙のタブー

「絶対入ってはいけない場所」

でした。

正夫は、幼い頃から何度も両親に聞かされていたそうです。

 

「あそこは山の神さんがおるでなぁ。迂闊に入ったら喰われてまうど」

と。

 

しかし、何故かその禁断の場所からさらに奥へ進むと、獲物が面白い様に捕れるのだそうです。

ただ、掟を破り、そこに侵入した猟師などは、昔から行方不明者が後をたたないそうです。

しかし、タケルがその茂みに向かって果敢に吠えています。あのイノシシ親子が近くにいることは間違いないのです。

 

正夫は誘惑に負け、禁断の地へと足を踏み入れてしまいました。

 

時刻は午後5時を過ぎており、まだ何とか周りは肉眼で見渡せますが、狩りをするにはもう危険な明るさです。

タケルも先程から吠えるのを止めています。

 

「流石にもう諦めるかな」

 

と正夫が思っていた時、再びタケルが猛然と吠え出し、駆け出します。

正夫もそれを追い、50mほど走った所でタケルが唸り声を上げながら腰を落として、威嚇の体勢をとっていました。

 

「とうとう見つけたか」と正夫は思い、前方を見ると、そこは少し開けた広場のようになっていました。そこに黒い影がうずくまって、何かを咀嚼する様な音が聞こえてきました。凄まじいほどの獣臭が辺りに漂っています。

 

正夫は唾を飲み込み、地面に片膝をついて猟銃を構えました。

 

「イノシシじゃないな」

正夫はそう判断しました。イノシシにしては体が細すぎるし、体毛もそんなには生えていません。

「狼か?」

一瞬そう思いましたが、この山中に狼がいるなんて聞いたことも見た事もありません。

 

良く見ると、「それ」は地面に横たわった、先程のイノシシの子供を食べています。

獲物を横取りされた様に感じた正夫は、「それ」に向かって猟銃の狙いを定め、撃とうとしましたが、引き金にかけた指が動かないのです。

それどころか、体が金縛りにあったかの様に動きません。

奥歯だけは恐怖のあまりにガチガチ鳴っています。

 

そして、正夫の気配に気がついたのか、「それ」は食事を止め、ゆっくりと正夫の方に顔を向けました。

 

どう見ても、それは人間の顔だったそうです。

しかも、2~3歳くらいの赤子の。

 

体長は1m50cm程で、豹の様な体、薄い体毛。

分かり易く言うならば「豹の体に顔だけ人間の赤子」と言った風貌です。

 

「バケモンだ・・・」

 

正夫の恐怖は絶頂に達しました。

 

「それ」はイノシシの血でギトギトになった口を舌で舐め回しながら、正夫に近づいて来ます。

「殺される」

正夫がそう思った瞬間、タケルが「それ」に飛びかかりました。

タケルは「それ」の右前足に食らい付き、首を激しく振っています。

「それ」は人間の赤子そっくりの鳴き声をあげ、左足でタケルの鼻先を引っ掻いています。

 

暫く唖然としていた正夫ですが、我に返ると体が自由に動く事に気がつきました。

すぐさま1発撃ちます。不発でした。「そんな馬鹿な」

正夫は猟銃の手入れを欠かさずやっており、今日も猟に出る前に最終確認をしたばかりです。

もう1度引き金を引きました。不発です。

 

正夫が手間取っている内に、「それ」はタケルの首筋に食らい付きました。タケルが悲壮な鳴き声を上げます。

正夫は無我夢中で腰に付けていた大型の山刀を振りかざし、こちらに背を向けている「それ」の背中に斬りつけました。

 

「るーーーーーーあーーーーーー」

 

と発情期の猫の様な鳴き声で「それ」は鳴きましたが、またタケルの首筋に喰らいついたままです。

正夫はもう一度山刀を振りかぶり、「それ」の尻尾を切断したのです。

 

尻尾を切断された「それ」は

「あるるるるるるるるるる」

と叫び声をあげ、森のさらに奥の茂みの中へと消えていきました。

 

正夫は暫くの間、呆然と立ち尽くしていましたが、タケルの苦しげな

「ハッハッハッ」

という息づかいを聞いて、我に返りました。

タケルの首筋には、人間の歯形そっくりの噛み後がついていました。出血はしていましたが、傷はそれほど深くなく、正夫は消毒薬と布をタケルの首に当て、応急手当をしてやりました。何とか自力で歩ける様子です。

モタモタしていると、またあのバケモノが襲ってこないとも限りません。正夫はタケルと共に急いで山道を下りました。

やがて、正夫の山小屋が見えてきました。

 

ここからだと、正夫の村まで30分とかかりません。安堵した正夫は、さらに足を早めて村へと急ぎました。

 

「変だな」と正夫が思ったのは、山小屋から下って15分ほど経った時です。同じ道をグルグル回っている様な錯覚を感じたのです。

この山は、正夫が幼少の頃から遊び回っている山なので、道に迷うなどという事は、まずありえないのです。

言いしれぬ不安を感じた正夫は、さらに足を早めました。さらに15分経った時。

 

「そんな馬鹿な」

 

目の前に、さっきの山小屋があったのです。

正夫は混乱しましたが

「あまりの出来事に気が動転し、道を間違えたのだろう」

と思い、もう1度、いつもの同じ道を下りました。

 

しかし、すぐさま正夫は絶望感に襲われました。

どうしても山小屋に戻ってきてしまうのです。

 

タケルも息が荒く、首に巻いた布からは血が滲んでいます。正夫は気が進みませんでしたが、今日は山小屋に泊まる事に決めました。

 

正夫が山小屋の中へ入ったときは、既に午後8時を過ぎていました。

急に安堵感、疲労感、空腹感が正夫を襲い、正夫は床に大の字になって寝転がりました。

そして、先程遭遇したバケモノの事を考えていました。

 

「やっぱり、あれは山の神さんだったんじゃろか」

 

そう思うと体の震えが止まらなくなり、正夫は気付けに山小屋に保存してある焼酎を飲み始めました。

保存食用のイノシシの燻製もありましたが、あまり喉を通りませんでした。

タケルに分けてやると、喜んで食いつきます。

 

「今日は眠れねぇな」

 

そう思った正夫は、猟銃を脇に置き、寝ずの番をする事を決心しました。

 

ガリガリ ガリガリ

 

何かを引っ掻くような音で、正夫は目が覚めました。

疲労感や酒も入っていたので、いつの間にか寝てしまっていた様です。時計を見ると、午前1時過ぎでした。

 

ガリガリ ガリガリ

 

その音は、山小屋の屋根から聞こえてきます。タケルも目が覚めた様で、低く唸り声をあげています。正夫も無意識の内に猟銃を手にとっていました。

 

「まさか、あいつが来たんじゃなかろうか・・・」

 

そう思った正夫ですが、山小屋の外に出て確かめる勇気も無く、猟銃を握りしめて、ただ山小屋の天井を見つめていました。

それから10分ほど、天井を爪で引っ掻くような音が聞こえていましたが、やがてそれも止みました。

正夫にとっては、永遠に続く悪夢の様な時間でした。音が止んでも、正夫は天井をじっと睨んだままでしたが、やがて「ボソボソ」と人間の呟く声の様な音が聞こえてきたのです。

 

「・・・っぽ・・・・っ・・・ぽ」

 

正夫は恐怖に震えながらも耳を澄まして聞いていると、急にタケルが凄い勢いで吠え始めました。そして、何かが山小屋の屋根の上を走る様な音が聞こえ、何か重い物が地面に落ちる音がしました。

タケルは、今度は山小屋の入り口に向かって吠え続けています。

 

ガリガリ ガリガリ

 

さっき屋根の上にいた何かが、山小屋の入り口の扉を引っ掻いている様です。

タケルは尻尾を丸め、後退しながらも果敢に吠え続けています。

 

「だっ、誰だ!!」

 

思わず正夫は叫びました。猟銃を扉に向かって構えます。すると、引っ掻く様な音は止み、今度はその扉のすぐ向こう側から、ハッキリの人間の子供の様な声が聞こえてきました。

 

「しっぽ しっぽ」

 

あいつだ。正夫は恐怖に震えました。ガチガチ鳴る奥歯を噛み締め

 

「何の用だ!!」

 

と叫びました。タケルはまだ吠え続けています。

 

「しっぽ しっぽ わたしのしっぽを かえしておくれ」

 

「それ」はハッキリと、人間の言葉でそう言ったのです。

正夫は、堪らずに扉に向かって、散弾銃を1発撃ちました。

 

「きょっ」

 

と奇妙な叫び声が扉の向こうから聞こえ、正夫は続けざまに2発、3発と撃ちました。

散弾銃に空けられた扉の穴から、真っ赤に血走った目が見えました。

 

「しっぽ しっぽ わたしのしっぽを かえしておくれ」

 

人間の幼児そっくりの声で、「それ」は言いました。

 

「尻尾なんて知らん!!帰れ!!」

 

正夫は続けざまに引き金を引こうとしましたが、体が動きません。

 

「しっぽ しっぽ わたしのしっぽを かえしておくれ」

 

「それ」は壊れたテープレコーダーの様にただそれだけをくり返します。

 

「し、知らん!!あっちにいってくれ!!」

「しっぽ しっぽ わたしのしっぽを かえしておくれ」

 

再びガリガリと扉を引っ掻きながら、「それ」は扉の穴から怒り狂った赤い目で正夫を見ながらくり返し言います。

タケルも吠えるのを止めて尻尾を丸めて縮こまっています。

 

「俺じゃない!!お前のしっぽなんて知らねぇ!!あっちにいけ!!」

 

正夫は固まったままの体で絶叫しました。すると「それ」は

 

「いいや おまえが きったんだ!!!」

 

と叫び、扉を破って中に入ってきたのです。

 

正夫の記憶は、それから途切れ途切れになっていました。

扉を破って現れた、幼児の顔。怒りを剥き出しにした血走った目。鋭い前足の爪。

自分の顔に受けた焼けるような痛み。

「それ」に飛びかかるタケル。

無我夢中で散弾銃を撃つ自分。

 

正夫が気がついた時は、村の病院のベッドの上でした。

3日間昏睡状態だったそうです。

 

正夫の怪我は左頬に獣に引き裂かれた様な裂傷、右足の骨折、体のあちこちに見られる擦り傷などの、かなりの重傷でした。

正夫は、村人には「熊に襲われた」とだけ言いました。しかし、何となく正夫に何が起こったかを感づいた様で、次第に正夫は村八分の様な扱いをうけていったのです。

 

やがて、正夫は東京に引っ越し、そこで結婚し、俺の祖父が生まれました。

 

ちなみに、この話は正夫が肺ガンで亡くなる3日前に、俺の祖父に話して聞かせたそうです。地名は、和歌山県のとある森深い山中での出来事だとだけ言っておきます。

 

ちなみに、愛犬のタケルですが、まるで正夫を守るかの様に、正夫の上に覆い被さって死んでいたそうです。

肉や骨などはほぼ完璧な状態で残っていたそうですが、何故か内臓だけが1つも残らず綺麗に無くなっていたそうです。

 

 

 

○感想

 「正夫」がどんな系統の猟師だかは分かりませんが、マタギ等、専門の猟師達は、水垢離や山言葉等、厳しすぎるくらいに山への信仰を怠らないそうです。

 どうしてそのように儀式的になったか……

 彼らは、後先考えない人間世界の自然界への侵食が、墓穴を掘ることになると予想出来ていたのでしょうか?それとも、何か、科学的にはあり得ないモノを、山の中で見てしまったのか……

 ある意味「しっぽ」は、実話が元になっているのかもしれません。

【2chの怖い話名作選】くねくね (感想付き)

f:id:RETRO777:20210217231504j:plain


これは小さい頃、秋田にある祖母の実家に帰省した時の事である。

 

年に一度のお盆にしか訪れる事のない祖母の家に着いた僕は、早速大はしゃぎで兄と外に遊びに行った。

都会とは違い、空気が断然うまい。僕は、爽やかな風を浴びながら、兄と田んぼの周りを駆け回った。

 

そして、日が登りきり、真昼に差し掛かった頃、ピタリと風が止んだ。

と思ったら、気持ち悪いぐらいの生緩い風が吹いてきた。

 

僕は、『ただでさえ暑いのに、何でこんな暖かい風が吹いてくるんだよ!』と、さっきの爽快感を奪われた事で少し機嫌悪そうに言い放った。

すると、兄は、さっきから別な方向を見ている。

その方向には案山子(かかし)がある。『あの案山子がどうしたの?』と兄に聞くと、兄は『いや、その向こうだ』と言って、ますます目を凝らして見ている。

僕も気になり、田んぼのずっと向こうをジーッと見た。

 

すると、確かに見える。何だ…あれは。

 

遠くからだからよく分からないが、人ぐらいの大きさの白い物体が、くねくねと動いている。

しかも周りには田んぼがあるだけ。近くに人がいるわけでもない。僕は一瞬奇妙に感じたが、ひとまずこう解釈した。

 

『あれ、新種の案山子(かかし)じゃない?きっと!今まで動く案山子なんか無かったから、農家の人か誰かが考えたんだ!多分さっきから吹いてる風で動いてるんだよ!』

 

兄は、僕のズバリ的確な解釈に納得した表情だったが、その表情は一瞬で消えた。

風がピタリと止んだのだ。

しかし例の白い物体は相変わらずくねくねと動いている。

 

兄は

『おい…まだ動いてるぞ…あれは一体何なんだ?』

と驚いた口調で言い、気になってしょうがなかったのか、兄は家に戻り、双眼鏡を持って再び現場にきた。

兄は、少々ワクワクした様子で、『最初俺が見てみるから、お前は少し待ってろよー!』と言い、はりきって双眼鏡を覗いた。

 

すると、急に兄の顔に変化が生じた。みるみる真っ青になっていき、冷や汗をだくだく流して、ついには持ってる双眼鏡を落とした。

僕は、兄の変貌ぶりを恐れながらも、兄に聞いてみた。

『何だったの?』

兄はゆっくり答えた。

 

『わカらナいホうガいイ……』

 

すでに兄の声では無かった。兄はそのままヒタヒタと家に戻っていった。

 

僕は、すぐさま兄を真っ青にしたあの白い物体を見てやろうと、落ちてる双眼鏡を取ろうとしたが、兄の言葉を聞いたせいか、見る勇気が無い。しかし気になる。

 

遠くから見たら、ただ白い物体が奇妙にくねくねと動いているだけだ。少し奇妙だが、それ以上の恐怖感は起こらない。

しかし、兄は…。

 

よし、見るしかない。どんな物が兄に恐怖を与えたのか、自分の目で確かめてやる!

僕は、落ちてる双眼鏡を取って覗こうとした。

 

その時、祖父がすごいあせった様子でこっちに走ってきた。

僕が『どうしたの?』と尋ねる前に、すごい勢いで祖父が

 

『あの白い物体を見てはならん!見たのか!お前、その双眼鏡で見たのか!』

 

と迫ってきた。僕は

『いや…まだ…』

と少しキョドった感じで答えたら、祖父は

『よかった…』

と言い、安心した様子でその場に泣き崩れた。

僕は、わけの分からないまま、家に戻された。

 

帰ると、みんな泣いている。僕の事で?いや、違う。よく見ると、兄だけ狂ったように笑いながら、まるであの白い物体のようにくねくね、くねくねと乱舞している。

僕は、その兄の姿に、あの白い物体よりもすごい恐怖感を覚えた。

そして家に帰る日、祖母がこう言った。

 

『兄はここに置いといた方が暮らしやすいだろう。あっちだと、狭いし、世間の事を考えたら数日も持たん…うちに置いといて、何年か経ってから、田んぼに放してやるのが一番だ…。』

 

僕はその言葉を聞き、大声で泣き叫んだ。以前の兄の姿は、もう、無い。

 

また来年実家に行った時に会ったとしても、それはもう兄ではない。

 

何でこんな事に…ついこの前まで仲良く遊んでたのに、何で…。

僕は、必死に涙を拭い、車に乗って、実家を離れた。

 

祖父たちが手を振ってる中で、変わり果てた兄が、一瞬、僕に手を振ったように見えた。

僕は、遠ざかってゆく中、兄の表情を見ようと、双眼鏡で覗いたら、兄は、確かに泣いていた。

表情は笑っていたが、今まで兄が一度も見せなかったような、最初で最後の悲しい笑顔だった。

そして、すぐ曲がり角を曲がったときにもう兄の姿は見えなくなったが、僕は涙を流しながらずっと双眼鏡を覗き続けた。

 

『いつか…元に戻るよね…』

 

そう思って、兄の元の姿を懐かしみながら、緑が一面に広がる田んぼを見晴らしていた。

そして、兄との思い出を回想しながら、ただ双眼鏡を覗いていた。

 

…その時だった。

 

見てはいけないと分かっている物を、間近で見てしまったのだ。

 

『くねくね』

 

 

 

○感想

 凄く怖いとは思ったんですけど……「僕」は狂わなかったんですかね。それとも、狂ってしまって、これは別の人がしたためた奇譚なのでしょうか……想像は尽きません。

 実は、私も、生まれは秋田ではないのですが、似たような田園地帯で、くねくねらしきものを見たことがあります。

 正体は、破損した送水管から、水が噴き出ていただけでした。

 「ああ、見てしまった……」と鳥肌を立てた夏のことを思い出します。

 

 しかし、これだけは言わせてください。

 「そんな怖いモノがいるのなら、事前に伝えといてくれよ……祖父さん……」

【2chの怖い話名作選】あなたの娘さんは地獄に落ちました (感想付き)

f:id:RETRO777:20210217225742j:plain


ある病院に残り三ヶ月の命と診断されている女の子がいました。

友達が二人お見舞いに来た時に、その子のお母さんは、まだその子の体がベットの上で起こせるうちに最後に写真を撮ろうと思い、病気の子を真ん中にして三人の写真を撮りました。

 

結局それから一週間ほどで急に容体が悪くなり、三ヶ月ともたずにその子はなくなってしまいました。

 

葬式も終わり、多少落ち着きを取り戻したお母さんはある日、病院で撮った写真の事を思い出しました。それを現像に出し取りにいって見てみると、その写真が見つかりません。写真屋さんに聞いてみると、

「いや、現像に失敗して、、、」というそうです。

不審に思ったお母さんは、娘の生前の最後の写真だからとしつこく写真屋さんに迫ったそうです。

写真屋さんもしぶしぶ写真をとりだし

「見ない方がいいと思いますけれど、驚かないで下さいね。」と写真を見せてくれました。

 

そこには、三人の女の子が写ってましたが、真ん中の亡くなった女の子だけがミイラのような状態で写っていたそうです。

 

それを見たお母さんはとても驚きましたが、供養してもらうといい写真を持ち帰りました。

それにしても恐ろしい写真だったため、霊能者のところに供養してもらう時に、これは何かを暗示してしているのではないかとたずねました。

すると、霊能者は言いたがりません。

やはり無理に頼み込んで話を聞ける事になりました。その霊能者が言うには

 

「残念ですが、あなたの娘さんは地獄に落ちました。」

 

今まで聞いた中で一番恐かった話です。

 

 

 

○感想

 「女の子」で、お友達がいると言うところから、娘さんは幼稚園生~大学生くらいかと推察しますが……娘さん……一体何をやったんでしょうかね……?

 地獄に落ちた人の生前の最後の写真がミイラになるというのなら、もっとたくさんミイラの写真が出回ってもいいような気がします。

 さて、あなたは天国へ行けるでしょうか?

 私はあんまり自信ない……(>_<)

 

 

 

 

【怖い話】真冬のプール

 

f:id:RETRO777:20210217220718j:plain

 隣町の小学校の話……

 幼馴染のケンジ(実名)は、水泳スクールで知り合った友人だった。

 ケンジの小学校では、真冬、外のプールが厳重に封じられるという。

 

 どこの学校でもそうだろう。真冬どころか、シーズン以外はプールを立入禁止にするはずだ。

 だが、隣町の小学校は事情が違った。

 

 真冬になると、絶対に誰も入らないよう、休み時間に見張りの先生が立つのである。

 それだけではない。

 シートを被せ、プールの中を見えなくしてしまう。

 ゴミが入らないようにするためだろうか。しかし、何故真冬だけに……?

 

 それに、どうせシーズン前にプール掃除を児童がやるのであるから、意味がない。

 一体、真冬、シートの下で何が起こっているのだろうか。

 

 ケンジは言った。

 「ずっと前、真冬に、あのプールに人が落ちて、心臓発作で亡くなったんだって」

 

 「真実は分からないけど、いじめがあって、プールに落とされたらしい。真冬になると、その子の霊が現れるとか……」

 

 ただの噂話である。

 しかし、学校側の奇妙な対応は、いかがなものか……

 

 その後、ケンジと同じ学校に通っていた、別の友人から話を聞くことが出来た。

 「ああ、霊ってのは噂だけど……俺、真冬にあのプールを見たことがあるよ……あのね……」

 

 神妙な顔をして言った。

 

 「夕日が反射して見えなかったけど、何かが泳いでた。波紋があったんだよ。あの大きさだと、2mぐらいは無いとおかしいね……間違いなく人間じゃない。外来種の養殖でもやってたのかね……」

 

 その小学校は廃校となってしまったが、まだプールはそこにある。

 今でも、異変はあるのだろうか?

 

 しかし、そもそも、水がない。

 浅く、雨水がたまっているだけである。

 当時、何があったのか……

 

 今では掴む術がない。