RETRO少年の懐古録

ミステリー、ホラー、サイエンス、サスペンス、SF、怖い話……

【怖い話】謎の老人と恐ろしい魚影

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 僕は、小さい頃に、奇妙な体験をいくつもしてきた。

 しかし、科学的に説明できそうなものがほとんどである。

 今回の内容も、実際に起こりうることではない。

 昔の記憶だから、別の記憶に上書きされたり、潤色されたりして「奇妙な出来事」として保存されているのかもしれない。いや、そうあってほしい。

 もし、ありのままだとしたら何だったのか。

 内容に入る。

 

 小学生の頃だった。

 デブ体型だった僕は、痩せたくて、毎朝5時台に起き、3㎞ほど走っていた。

 「走っていた」というのは建前であって、実際には500mほどで音を上げ、のろのろと歩いていた。

 それでも、朝の散歩は、健康によい。

 その日は、曇り空で、昼頃から雨が予報されており、じめじめしていた。

 雨が降ったら行かないが、まだ降っていないので、行くことにした。

 

 僕は人嫌いだったため、人のいないコースをいつも歩くのだが、この日は違った。

 知らないお爺さんが、川べりのコンクリートブロックに腰かけていた。

 

 目が合ったので「おはようございます。」と言ったら、

 「おーう」と返してくれた。

 

 そのまま通り過ぎようとしたとき、

 「あんちゃんよー」

 急に呼び止められた。

 「はい?」

 「あれ見てみ…」

 老人が川を指さした。

 言われるままに、川をのぞき込み、そこにいたモノを見て、

 思わず「ひえ…」と言ってしまった。

 

 巨大な魚がいた。

 大小の感覚は定かでないが、それでも、大きな何かが悠々と泳いでいたのである。

 僕の知っている魚ではない。

 薄い体に、上向きの口と2つの巨大な目…

 

 例えるならば、アンコウとコチを足して2で割ったような風体だった。

 

 「すげえだろ?ありゃ『ずごぐお』っつうんだよ。」

 「ズゴグオ?」

 「ああ…あれが泳いでるときはな、釣りとか魚採りはしちゃなんねえんだ。ばちが当たっぞ…」

 訛りの強い爺さんで、聞き取りにくかったが、どうやらあの魚は「ズゴグオ」というらしい。

 

 実際にそんな魚がこの辺には生息しているのか…

 と僕はそう思っていたのだが、成長するとともに、その思い出の異常性に気づき始めた。

 

 「ねえおじいちゃん、ズゴグオって魚知ってる?」

 「知らねえな、なんだそりゃ?」

 祖父さんだけではなく、地域の大人はだれもそんな魚を知らなかった。

 

 図鑑にも載っていない。

 

 ネットで「ずごぐお」と調べてもなにも出てこない。

 

 海の近くならともかく、僕の地元は内陸である。

 淡水魚で、1mほどになる魚…

 鯉と雷魚くらいのものではないだろうか?

 あるいは、逃げ出した外来種など…

 

 しかし、どれとも違う風体だった。

 

 狂った爺さんの戯言だったのか?

 しかし、そうだとしたら、僕がこの目で見たあれは何だったのか…

 

 それから、約十年が経過したのち…あることに気づいてしまった。

 推測にすぎないが、ふと気づいて、身震いがした。

 

 謎の魚…「ズゴグオ」

 

 もしかしたら、あの爺さん…

 「ずごぐお」…ではなく、

 「地獄魚」と言っていたのではないだろうか?…と…

 

 しかし、地域の大人に聞いても、皆「知らん」という。

 地獄魚で検索しても、それらしいものは出てこない。

 

 あの爺さんとも会っていないし、あの魚の正体も知れない。

 

 あの爺さんは人間だったのか?

 あの魚は、本当に魚だったのか?

 そもそも、あの朝のことは現実だったのか…

 

 疑い始めたらキリがないのだが、夢にしてはおかしく、今の今まで鮮明に残っている…謎の記憶…

 

 あの魚の風体を、僕は一生忘れることはないと思う。