RETRO少年の懐古録

ミステリー、ホラー、サイエンス、サスペンス、SF、怖い話……

【ある意味怖いが、スカッとする微妙な話】 50m走

 これは、私の友人……ワイ君の話である。

 

 ……

 ……

 ……

 ワイの名は、ワイ……

 50m走について語りたい。

 

 50m走……体力テストの1種目である。

 小中あたりまでの話かもしれないが、大体、足の速い奴はモテる。

 ワイの通っていた高校では、クラスマッチの種目にリレーがあり、50m走の記録をもとに、足の速い順に、男子5人、女子5人が各クラスから選抜されるのである。

 

 ワイには、屈辱の経験がある。

 クラスマッチなぞ、運動音痴や、陰キャにとっては地獄に他ならないのだが、それだけではない。

 ワイは、50m走のタイムが7.2秒だった。

 体力テストの点数は7点……あまり速い部類ではない。

 しかし、ワイのいたクラスにはあまり速い奴がおらず、ワイみたいなクズ男にもリレーの選手に選ばれるチャンスがあった。

 足の速い順に、4人、枠が埋まった。4番目の奴のタイムは、7.0秒

 「じゃあ、五番目は、7.2秒のワイ君かな?」

 (……やった!ワイにも目立つチャンスが回ってきた!)

 

 ……と、心の中で喜んだのもつかの間……

 

 「先生!こいつ7.1秒ですよ」

 陽キャのあの声と、あの絶望は今でも忘れない……

 卓球部の、クソデブ天パ陰キャ眼鏡が、しれっと7.1秒を出していたのだった。

 デブでも卓球部……足腰が強いのだろう……

 奴は、脂ぎった顔でニタニタとほくそ笑んでいた。

 

 (ふざけんな!ふざけんな!!ふざけんなあああ!!!)

 ワイは心の中で叫んだ!

 あまりの屈辱に、家に帰って、あの肉団子のようなバカ面を叩き潰すかのように、古びた割れ瓦を何枚も砕き、手に血を滲ませたのを覚えている。

 

 結局、ワイのクラスは、リレー最下位……

 戦犯は当然、あのデブだった。

 「もしかしたら、戦犯になっていたのはワイだったかもしれない…そもそもあのデブが、7.1秒で走れるわけがない…」

 ……と自分に言い聞かせ、それ以来、忘れるようにしていた。

 

 ワイは、ジャスティン・ガトリンの、武装色の覇気を思わせる鋼のような筋肉、そしてその走りに、深く感銘を受けたことがある。

 それから、しばらく激動の時代となってしまって忘れていたが…

 今からでも、ワイは50m走で10点を取れるように努力しようと思う。

 10点のタイムは、6.6秒以下だ。

 約0.6秒短縮する必要がある。

 そういえば、別のクラスで、5秒台を出した化け物がいた。

 野球部の男だったが、その化け物は、えらく女にモテた。

 ……

 ……

 ……

 

 人生の目標が過去に起点する……

 素晴らしいですね……

 

 ワイ君を見習おうと思います。