RETRO少年の懐古録

ミステリー、ホラー、サイエンス、サスペンス、SF、怖い話……

【怖い話】鏡

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昔の話……

親戚の子と、散歩をしていた時のこと……

お盆の時期だったと記憶している。

 

田園から少し離れたところにある、森と、大きな石壁の間にある、長い坂……

そこに差し掛かった時、長い髪の女の人が、暗い顔で犬を散歩していた。

 

田舎の住宅地であるため、大体は顔の見知った人であるが……その人にも、犬にも見覚えがなかった。

 

「こんにちは」

都会では素通りだが、田舎だと見知らぬ人でも挨拶をする。

 

「……あ、こんにちは……」

女の人からは、ぎこちない返答を得た。

 

その後……

 

先ほどまでニコニコしていた親戚の子の様子がおかしい。

はしゃいでいたのが、急に黙りこくってしまった。

そして、ずっと背後を気にしている。

 

「どうしたの?」

 「家、ついてから話す……」

 

その子は言った。

「さっき、あいさつした女の人……鏡に映ってなかった。見間違いかもしれないけど」

 

鏡、つまり、カーブミラーを見た時に、あの人は映っていなかったという。

犬とリードだけだったとか……

 

盆の時に帰ってきた幽霊だったのかもしれない。

まあ、あっちの世界から、死に分かれた愛犬の散歩をしに戻って来たんだなと、感慨にふけることで、恐怖を拭い去ることを決めた。

 

その後……その女も、犬も、目にしていない。

ここで終わればよかったのだが……

 

 

……不可解な後日談が発生する。

 

 

うっかりしてその時は気づけなかったが、あの曲がり角に、カーブミラーなんて存在しないし、存在していたこともないのである。

 

もう一度、親戚の子に尋ねた。

すると……

「いや?カーブミラーじゃなくて、鏡……普通の、全身映るような長いやつがあったじゃん?」

 「……」

 

恐らく、姿見のことをいっているんだろう。

しかし、明らかにそんなものは目に入らなかったと記憶している。

姿見なんかがあったら、すぐ気づく気がするが……

 

 

 

一体、何がそこにいて、だれが何を見ていたのか……

今となっては訳も真相も分からない、遠い夏の話でした。