RETRO少年の懐古録

ミステリー、ホラー、サイエンス、サスペンス、SF、怖い話……

【怖い話名作選】海外の怖い話34~43

No.34「ノックの音」

冬の凍えるように寒い日の午前2時4分。

誰かがドアをノックする音で、私は眠りから覚めてしまいました。

無視して寝ようかとも考えたのですが、約3秒おきにコン……コン……と規則正しく、しつこくノックが続くため、私は大きくため息を吐きながらスリッパを履き、重い足取りで階段を降りていきました。

足音が聞こえたのか、玄関をノックする音は早くなり、私を苛立たせます。

そして玄関の前まで来ると、そこでノックはピタッと止まってしまったんです。

外を確認しても誰もいません。

子供のイタズラ?

部屋に戻り、ベッドで再び横になると、すぐに眠りに落ちました。

午前4時21分。

玄関のドアがバタンと閉まる音で私は飛び起きました。

誰かが私の家の中に?

ふと、ベッドの横の寒さで霜の下りた窓を見ると、誰かが指で描いたスマイルマークが、私を見ていました。

誰かが近くにいる……

枕元に置いてあった携帯電話を掴んで窓から庭へ飛び降り、緊急通報しながら道路を横切って、近所の家に助けを求めました。

出てきた住民は泣いている私を強く抱きしめ、事情を聞いてくれましたが、不安は一向に拭えません。

自宅へ警察がやって来たのは午前5時42分。

家の中や周辺を捜索し、私が避難していた隣人宅まで報告に来てくれました。

「家の中からは、怪しい人物や証拠となるようなものは発見されませんでした」

私が見た窓のスマイルマークも見つからなかったと言う。

警官は、よく眠ってからストレスや不安を医者に相談した方がいいとアドバイスをして帰っていきました。

まるで、私が妄想に取りつかれてるとでも言いたいような口ぶりで……

しばらく隣人の家で休ませてもらった後に、私は自宅へ戻り寝室にカメラを仕掛けました。

録画をセットして、その日は早々と就寝。

幸い、夜は玄関をノックされることもなく、とても熟睡できました。

翌朝、目を覚ました私は、録画した映像を頭から再生して確認したのですが……

何も映っていないことを祈りながら映像を早送りすると、午前3時ちょうどに異変が起きたのです。

暗い部屋のベッドの下から、何かが這い出してきました。

ガリガリに痩せ細った全裸の男……

男は音もなく立ち上がり、寝ている私をじっと見下ろします。

全く微動だにせず、約1時間も、ただただ私を見下ろす男。

そして、次に動いた男は、私が仕掛けたカメラを覗き込み、青白く、血管が異常に浮き出た顔をレンズに近づけ、満面の笑みを浮かべたんです。

そこから男は、2時間もカメラを見つめ続けました……

最終的に男は再び私のベッドの下へ潜り込み、それからしばらくして、目を覚ました私がカメラの録画を停止したところで映像は終了。

つまり……

あの痩せ細った名も知らぬ全裸の男は、まだ、そこにいる……

 

 ――― ――― ―――

 

No.35「夜のレッスン」

3歳の娘がトイレットペーパーの芯を2つ紐で結んで、振り回していたんです。

「何してるの?」

「ヌンチャクの練習」

なぜ、2歳の娘が「ヌンチャク」なんて知っているのか……娘の前でカンフー映画を見た覚えも、ヌンチャクと口にした記憶もなかった。

「何で……ヌンチャクを知ってるの?」

「夜になるとアダムが教えてくれるのよ。自分を守るために、ちゃんと練習するように言われたの」

血の気が引いて、手にはじっとりと汗が滲んでいました。

「アダムって、どんな人?」

「背が高くて、髪は金色で、青い目をしてるよ……」

娘にアダムのことを話したことは一度もありませんでした。

彼女が大人になるまでは、話さないと決めていたので。

「ママはアダムを知ってるでしょ!!! ママはアダムを知ってるの!!! アダムは頭が痛くて死んじゃったの!!!」

娘が生まれる4ヶ月前。

背が高く、ブロンドで青い目、格闘技に打ち込んでいたアダムは脳動脈瘤によって27歳でこの世を去ってしまいました。

娘はアダムのことを怖がっていないようですが、その後も娘の前に彼が姿を表しているのか、私には聞けません。

もしかすると、アダムのレッスンは、まだ夜な夜な続いているのかもしれません

 

 ――― ――― ―――

 

No.36「悪い夢」

「パパ起きて……怖い夢を見たの」

眠い目をこすりながら枕元の時計を確認すると、時刻は午前3時23分。

暗い部屋の中にパジャマ姿の娘が立っている。

「とりあえずパパのベッドに入って、どんな夢を見たか聞かせてごらん」

「嫌よパパ……」

娘の声は震えていた。

何か胸騒ぎを感じて、眠気は一気に消え去る。

「どうして嫌なのかな?」

「だって、さっき見た夢の中で、私はベッドに入ってパパに夢の話をしていたの」

「夢の中で夢の話?」

「うん……そうしたら、夢の中のパパが急に大きな声を出したの……」

しばらくの間、頭がしびれるような感覚で思考が停止する。

何かをしなければ、考えなければいけないけれど……暗闇の中で泣きそうな顔をしている娘から、目を離すことが出来ない。

その時、私の背中の方で、何かが動く気配を感じた……

 

 ――― ――― ―――

 

No.37「薬の時間」

「ライルさん、お薬の時間です」

「もう勘弁してください……薬は嫌なんです……お願いします」

どれだけ頼んだって、私の言うことなんか聞いてくれないのはわかってる。

靴を舐めて助かるなら、革靴がふやけるまで舐めたっていい。

でも、私はベッドから起き上がることすら出来ない。

「そんな深刻に考えないでください。薬を注射すればライルさんの気分も良くなりますから」

看護師は私の腕に、黄色い液体の入った注射の針を突き立て、静脈の中へ一気に流し込む。

耳鳴りがして眼球の奥が熱くなると、次は体中の内臓から脳みそまでが腐り落ちていくような、最悪の倦怠感が全身を這いずり回って、息をしているのも嫌になる。

「殺してくれ!!!」

実際には、陸へ放り投げられた魚のように口をパクパクさせるのが精一杯で、私の願いは機械のような眼差しで見下ろす看護師には届いていないだろう。

「ここから逃してくれるなら何でもする」と悪魔に誓った。

今にも壊れてしまいそうな私の尊厳をかけて強く念じた。

「本当に何でもするんだろうな……?」

鼓膜の底から声がする。

低く嗄れた嫌な声がする。

「お願いします、何でもするから助けてください。何をしてもかまわない。もう、ここにはいたくないんです」

「本当に何でもするんだろうな……?」

「もちろんです」

重くて目を開けることもできなかったのが嘘のように、私の瞼はすっと開いた。

目の前に映ったのは、ついさっきまで寝ていたのと同じ部屋……

ただ、私はベッドに拘束された見覚えのある男の前に立っていた。

「ライルさん、お薬の時間です」

 

 ――― ――― ―――

 

No.38「消えた友人」

大学で知り合った友人6人はキャンプをするため車で森に向かっていた。

数時間運転して目的地に到着。

彼らは、キャンプを予定していた森の近くに湖を発見した。

そこには飛び込んで遊べそうな、ちょうどいい高さの崖もあった。

急いでテントなどの準備を済ませ、6人は透き通った湖へ飛び込んで、日が暮れるまで自然を満喫。

そろそろ引き上げようとした時、一人が崖の上から飛び込むと言い出した。

友人のチャレンジを見守ることにした5人は、笑い話をしながら待っていたが、いつまで経っても崖の上に友人は姿を表さない……

しばらくして、さすがに何かがおかしいと感じた5人は友人を捜索。

ところが、結局、友人は見つからず、再び6人が揃うことはなかった。

1年後、友人の死を弔うため、5人は再び湖に集まった。

すると5人は、湖の畔で一人の男性を発見した。

徐々に近づいていくと、それは湖の畔で俯いている失踪した友人だった。

興奮した5人は友人の名を叫び、彼のもとに走り出す。

しかし、友人は全く反応しない。

すぐ側まで駆け寄っても、まるで気付いてくれない。

無反応な友人が泣きながら見ていたのは、湖の畔に建てられた5つのお墓だった。

 

 ――― ――― ―――

 

No.39「腕時計」

彼は10歳の誕生日にプレゼントで腕時計をもらった。

それはプラスチック製のデジタル時計で、見た目はごく普通。

しかし、デジタル表示は膨大な時間をカウントダウンしている変わった時計だった。

「そこに表示されているのは、お前がこの世界で使える残り時間だ。賢く使えよ」

父親は息子に告げた。

少年は成長して青年になり、何でも全力で取り組んだ。

休みがあれば山に登り、海で泳いだ。

友人たちとの会話を楽しみ、恋人を愛した。

男は自分に残された時間を知っていたため、何も恐れるものはなかった。

そして、青年は全力で人生を駆け抜け、いつしか老人になった。

10歳の時にもらった腕時計に表示された時間は残りわずか。

自分の最後を見届けるためにやって来た、古いビジネスパートナーで、かけがえのない友人と握手。

息子を抱きしめ、妻の額にキスをした。

年老いた男は微笑んで目を閉じる。

その時、時計は一度だけアラームを鳴らしてデジタル表示は消えた。

しかし、男は死ななかった。

体に異常はなくピンピンしている……

この時、男は生きていることに喜びを感じたと思いますか?

いいえ、その時、はじめて男は死の恐怖に震えたのです……

 

 ――― ――― ―――

 

怖い話 其ノ四十「墓の下から」

海外の怖い話「鈴の音」

まだ、今ほど医学が発達していなかった頃の話。

死亡したと誤認された人が、墓の下に埋められてから意識を取り戻すことがあった。

ある村では万が一に備えて、棺から地上に繋がる呼吸用の管が備え付けられ、助けを呼ぶための鈴が遺体と一緒に埋葬されていた。

その夜、墓の管理を任されていた青年は、鈴が鳴る音を耳にした。

地元の子供がいたずらで鈴を鳴らすこともあったが、青年は念のため音のする方向へ向かった。

やがて鈴の音が近付いてくると、棺と地上を結ぶ管から、かすかに若い女性の声が聞こえてきた。

「誰かいませんか……助けてください……私をここから出してください……」

「あなたはサラ・オバノンですか?」

「そう……私は……サラ……まちがいありません」

「墓には、このように記されています。あなたは1857年2月20日に亡くなったと」

「違うわ!! 私は死んでいません!! それは何かの間違いです……早く!!! 早くここから出して!!!」

「申し訳ございませんサラさん。あなたを出してあげるわけにはいきません」

そう言うと、青年は地中からの声が聞こえていた管に土を詰めて塞いでしまった。

「あなたは戻ってきては、いけないのです」

それは暑い夏の夜の話。

22歳で亡くなったサラ・オバノンが墓に埋められてから、すでに半年以上が経過していた……

 

 ――― ――― ―――

 

怖い話 其ノ四十一「黒いヴォルガ」

ロシアが、まだソビエト連邦だったころの話。

自動車メーカーGAZ社の車種ヴォルガは、冷戦時代の東ヨーロッパで政治家やビジネスマンの乗る高級車として人気となった。

共産国の一般人には手の出せない、最高のステータス。

ところが、一般市民の憧れるヴォルガに関する不気味な噂が、当時のソ連国内で広まっていたと言う。

「夜遅くに黒いヴォルガを見たら気をつけろ……幼い子供が誘拐されると二度と戻ってこない……」

黒いヴォルガに乗る人物によって連れ去られた子供たちは、欧米やアラブの金持ちに臓器を売られ、余った骨や皮膚は薬品で溶かされ、跡形も残らず、この世から消されると噂された。

現代では、よくある都市伝説のように聞こえるかもしれない。

ただ、東西冷戦でアメリカと対立していた当時のソ連では、共産主義を批判する人たちが、深夜に秘密警察によって拉致され、命を奪われていたのは史実として明らかになっている。

つまり……

「黒いヴォルガ」の噂話は、全てが作り話という訳でもない……

 

 ――― ――― ―――

 

怖い話 其ノ四十二「息子の目」

私は息子が恐ろしいんです。

自分の息子に対して恐怖心を抱くなんて、父親にあるまじきことで、親子の関係が健全でないことも承知しています。

それでもやはり、息子が怖くて仕方ないんです。

夜中に私がベッドの中で眠りに落ちる寸前になると、小さな足音が寝室の前で止まり、スッとドアが開いて息子が直ぐ側までやって来るのです。

「どうしたんだ?」

息子は何も答えてくれません。

暗闇の中で、じっと私の目の奥を覗き込むように見つめるだけ……

その息子の目が、私には恐ろしくて恐ろしくて、さっきまでの眠気は消し飛んで、全身に嫌な汗が滲みます。

ベッド脇のランプを点けようとするとすると、息子は小走りで寝室から出ていきます。

そして、再び私が眠りに落ちる寸前で、足音が寝室の前で停まり、ドアが開くのです。

毎晩のように息子がやって来るようになって、1年になります。

息子がやってくるのは必ず妻が寝ている時だけなので、目撃しているのは私だけ。

妻に相談したのですが、メンタルクリニックへ行くことを勧められ、私の言うことは信じてもらえません。

耳栓をして足音を絶っても、暗闇の中で息子が私の顔をじっと覗き込んでいる気配を無視することは出来ず、寝不足と心労で私の頭は、可怪しくなってしまいそうなんです……

「何か言いたいことがあるなら言ってくれないか……」

いつものように息子は私の目を覗き込み、隣では妻が寝息を立てています。

おそらく息子は知っているのでしょう。

駅のホームから突き落としたのが私だと……

 

 ――― ――― ―――

 

怖い話 其ノ四十三「神との接触実験」

1970年代初頭のことだった……

アメリカで、あるキリスト教系カルト団体に所属する科学者、宗教学者達が、教団施設内で秘密裏に実験を行った。

それは「あらゆる感覚を絶たれた人間は、神の存在を感じることが出来る」という仮説に基づき、外科手術によって人間の五感を意図的に遮断して経過を観察するという、常軌を逸した人体実験だった。

教団に所属する狂信的な科学者、宗教学者は「人間の五感は神に近づくことを妨げている」と本気で考えていたからだ。

「私の人生には、もう何も残されていません。ですから、教団のお役に立てるなら、この体を好きに使ってください」

実験のボランティアに信者の老人が名乗りを上げた……

「あなたは自分の声すらも聞こえなくなりますが、声を出すことは出来ます。ですから、頭に浮かんだことや思ったことや感じたことは、全て言葉に出してください。私たちと神が、あなたの直ぐ側でいつも見守っています」

老人は脳外科手術を受けた結果、肉体的には健康だったが、視覚、嗅覚、聴覚、味覚、触覚の全てを失った……

術後の老人は、五感を失ったことに対する恐怖は見せず、起きている時は、これまでの人生を振り返る思い出話を語り続け、教団関係者が交代で観察を行った。

しかし、手術から4日後に老人へ異変が起きた……

「誰かが私の頭の中に喋りかけてくるんです……何を言っているのかは、わかりません……」

老人は神の声を聞いているのか?

それとも頭がおかしくなってしまったのか?

2日後、それまで毅然としていた老人は何かに怯えはじめ、唸り声、叫び声をあげはじめた……

そして、知るはずもない教団関係者の家族や親族、友人の名前を呼び始めた。

実験を見守っていた人たちは、これに怯えた。

なぜなら、老人が挙げた名前の人たちは全て故人だったからだ。

意思の疎通は不可能なので、老人に何が起きているのか聞き出すことは出来ない。

しかし、偶然では説明の出来ない事態に「実験を中断するべき」と「研究続行」で意見が対立した。

故人の名前を呼び、叫び、唸り、気絶したように眠る……

老人の症状は目に見えて悪化していった。

そしてついに……

「もう嫌だ!! 地獄なんて行きたくない!!!」

老人を見守っていた関係者達は硬直した……

さらに老人は叫び続ける……

「天国なんて全部ウソだ!! 誰も許されることはない!! 死んだら全員、地獄へ落ちるんだ!!私の五感を返してくれ!!」

老人は同じことを繰り返し叫び、自分の見ている地獄の様子が、どれだけ悲惨か訴えた。

しかし、ここで実験を中断しては、教団の教え、神や天国の存在を否定することになってしまう。

後に引けない教団関係者達は、老人へ神が救いの手を差し伸べる時は近いと解釈。

徐々に老人は言葉を口にすることが減り、叫ぶこともなく、呪文のような意味不明のつぶやきが増えていった。

そんな状態が2週間ほど続き、研究を続けるか中止するか、答えを出せないでいた頃……

盲目であるはずの老人は、定期検診を行っていた研究者を見つめて、こう言った。

「やっと神と話すことが出来たよ。あいつはもう、人間に興味ないってさ」

かすれた声で呟いき、乾いた笑い声を上げた後に、老人は息を引き取った……

 

 ――― ――― ―――

 

〇出典

bq-news.com