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いいことなのか、それとも、悪いことなのか、わからない。
でも、多くの人間がそうであるように、おれもまた、自分の生まれた国で育った。
そして、ごく普通の中流家庭に、生まれつくことができた。
だから、貴族の不幸も、貧乏人の苦労も知らない。別に、知りたいとも、思わない。
子供のころは、水軍のパイロットになりたかった。ジェットに乗るには、水軍に入るしかないからだ。
速く、高く、空を飛ぶことは、何よりもすばらしく美しい。
でも、学校を卒業する二ヶ月前、そんなものにはなれないってことを、成績表が教えてくれた。
――だから、宇宙軍に入ったんだ。
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○王立宇宙軍オネアミスの翼 概要(Wikipediaより引用)
架空の惑星にあるオネアミス王国を舞台として、王立宇宙軍の士官シロツグが史上初の宇宙飛行士に志願し、仲間とともにロケット打ち上げを目指すという作品。
○ストーリー(Wikipediaより引用)
1950年代の地球に似ている「もうひとつの地球」にある「オネアミス王国」、正式国名「オネ・アマノ・ジケイン・ミナダン王国連邦」が舞台となる。
「失敗ばかり」「なにもしない軍隊」と揶揄され、オネアミス王国の世間からは落第軍隊として見下されている王立宇宙軍。宇宙軍士官のシロツグ・ラーダットはかつては水軍のジェット戦闘機乗りにあこがれていたが、仕方なく入った宇宙軍で張り合いのない日々を送っていた。ある夜同僚たちと訪れた歓楽街で、シロツグは献身的に布教活動を行う少女、リイクニ・ノンデライコと出会う。多少の下心を秘めてリイクニの住居を訪れたシロツグだったが、彼女から「戦争をしない軍隊」である宇宙軍をほめられて思わず発奮し、人類初の有人宇宙飛行計画の宇宙飛行士に志願する。最初は呆れていた同僚たちもシロツグのやる気に感化され、宇宙旅行協会の老技術者たちとともにロケット打ち上げの準備を進める。
落ちこぼれ軍隊の凡庸な軍人から国家的英雄にまで祭り上げられるシロツグだったが、打ち上げ計画の裏事情、多額の税金を使う宇宙開発の是非、開発責任者の事故死などのつらい現実に直面する。さらに計画を妨害するため敵国「共和国」が放った暗殺者に命を狙われ、自己防衛のためとはいえ人を殺めてしまう。シロツグはリイクニに救いを求めようとするが、宗教にひたむきな彼女とはすれ違うばかりで、むしろ彼女と暮らす幼な子マナとの交流に心を癒される。
打ち上げ当日、隣国リマダとの国境近くに設けられたロケット発射台を巡り、侵攻してきた共和国リマダ駐留軍と王国軍との間で激しい局地戦が始まる。カウントダウンが一旦中止されるも、シロツグは操縦席の中から仲間たちに発射決行を呼びかける。ロケットは弾丸飛び交う地上を離れて天高く上昇し、敵味方が見守る中、打ち上げは成功を遂げる。衛星軌道上にたどりついたシロツグは、地上の人々に向けた放送を始め、当初の原稿には無い祈りのメッセージを語りかける。
○名言
地上で、この放送を聞いている人、いますか。
わたくしは、人類初の、宇宙飛行士です。
たったいま、人間は初めて、星の世界へ足を踏み入れました。
海や、山がそうであったように、かつて神の領域であったこの空間も、これからは、人間の活動の舞台としていつでも来れる、くだらない場所と、なるでしょう。
地上を汚し、空を汚し、さらに、新しい土地を求めて、宇宙へ出て行く。
人類の領域は、どこまで、広がることが許されているのでしょうか。
どうか、この放送を聞いている人、お願いです。
どのような方法でも、かまいません。
人間がここに到達したことに、感謝の祈りを、捧げてください。
どうか、お許しと、憐れみを。
我々の進む先に、暗闇を置かないでください。
罪深い、歴史のその果てに、揺るぎない、ひとつの星を、与えておいてください。
○感想
恐れ多くて、感想なんて述べられません……
ですが、この作品では、科学技術の向こう見ずな発展と、物欲に目をくらませる現代世界と現代人の行く末を案じています。
そのような作品は無数になるかもしれませんが、これだけのメッセージの強さは、唯一無二のモノがあるでしょう。
我々のいく末に、どうか、暗闇を置かないでください。
どうか、かけがえのない、一つの星を……