RETRO少年の懐古録

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【語り】同級生が死んだ その2

retro777.hatenablog.com

棺桶の中で花々に囲まれているあいつの顔は、穏やかだった。

 

口のところに少々怪我をしていたが、恐らく事故によるものだろう。

 

葬儀は、特にトラブルもなく終わり、そののち、私含め、同級生は皆解散した。

 

だが、私はここで、強い悔恨がある。

何故、奴の骨を拾わなかったのだろうと。

 

拾わなくてもいい。

だが、焼き場に居合わせることは出来たはずである。

 

奴は、そんな骨だけの姿を見られたくはないと思っていただろうか?

しかし、奴が天国へ行くのを友人として見届けてやれなかったのではないかという思いが、往々にしてある。

 

奴は寂しかっただろうか?

寂しさを感じさせてはいなかっただろうか?

 

葬儀は滞りなかったとは言えど、親族は病気のごとくやつれていた。

手を合わせ、念仏を唱える男もいた。

肩を震わせ、涙を流す男女もいた。

葬儀に参加して初めて、奴の死という事実に直面し、放心状態になって介抱される女もいた。

 

告別式が終わったのちに待っていたのは、奴というピースを欠いた、当たり障りのない日常だった。

 

寂しいが、この世は諸行無常

いつまでも、奴の死に囚われているわけにはいかないのである。

 

それでも、今になってなお、フッと奴のことが頭をよぎる。

頭は良くは無かったが、運動が出来て、コミュニケーション能力の高かったあいつが、もしダメダメな私の人生を生きていたなら、どれだけスマートに事を運び、人生をより良いモノにしてくれただろうか?

 

今私が生きている「現在」は、あの日あの時、プツリと死んでしまった奴が、どうしても生きたかった「未来」なのである。

 

奴の死を経験したのにも関わらず、私は生き方を誤り、生ける屍となってしまった。

 

そうして今は、あるか否かも分からない、タイムリープに縋っている。

みっともない事この上ない。

 

ただし、私は奴の死を乗り越えてここにいる。

最終的に間違いだったとは言えど、私は過去において、その時その時の最良の選択をしてきたのである。あらゆる戦況において、ベストを尽くしてきたのである。

 

そうして、タイムリープという選択に行き着いた。

 

もし、過去に戻れるのなら、私はあいつの事故を防ぎたい……

 

……とは思うのだが、奴の死は、もしかしたら必要で重要なモノだったのかもしれない。

 

本当は、もっと悲惨な事故が起きて、大勢の人間が亡くなる予定だった。

あいつがあの時亡くなったことで、皆の、不慮の事故に対する安全意識が強化され、その事故を未然に防いだのか。

あいつは知らず知らずのうちに、皆の命を守ったのか。

 

考えようによっては、色々ある。

 

人生万事塞翁が馬という言葉がある。

人生において、何が良くて何が悪いのかは分からないということだ。

 

そう考えると、私や、周りの者に降りかかった不幸は、一概に不幸だとは言えないのかもしれない。

不幸の本質は、もっと悲惨で非情な現実から私を守った、幸なのかもしれない。

 

心からそう考えてそう思い、未来に踏み出せるのなら良いのだが……

 

過去に忘れてきたものはあまりにも多く、重く、大きく……

視野が狭まっているとは言えども、そう捉え難いのが現実である。

 

タイムリープは、安易に出来るモノであってはいけないのだろう。

 

続く。